薄桜鬼
□言葉の裏にあるもの
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side 沖田 総司
最近変な咳が出てるせいで、土方さんどころか山崎くんまで過保護すぎる。
おかげで今日は、僕が巡察の番だったのに一君にとられちゃうし。
「ここまで過保護だと逆に邪魔にしてるとしか思えないんだけど…」
と呟きかけた言葉は、目の前からやってくる人物を見て変わる。
「千鶴ちゃぁん。」
「っ!?沖田さん?」
……何、その反応。まるでいつも僕が意地悪してるみたいじゃない。
気に入らないなぁ。
大体こんなに天気のイイ日に寝てろだなんて土方さんも人が悪いし、何より退屈だし?
「あの…沖田さん?」
「ん〜?」
「そろそろ離していただきたいんですが…」
「なんで?」
「なんでって…」
しどろもどろになる君が面白い。やっぱ千鶴ちゃんは、こうじゃないと。
せっかく見つけた玩具なのに、みすみす逃がす真似を僕がすると思う?
ギュッと抱き締めれば、それに呼応して固まるし、緩めれば緩まる。
「そういえば、今日は沖田さんが巡察の番でしたよね?」
腕の中から見上げてきた千鶴ちゃんに僕は無言で微笑みかけた。
せっかく忘れかけてた苛立ちが、また沸き上がってくる。
「土方さんが過保護なんだ。」
僕がしゅんとした顔をすれば千鶴は、慌てて、
「まだ、風邪治らないんですか?」
って聞いてきた。
…どうしよう。
うんって言えば、心配した顔でうろたえるだろうし、ううんって言えば、本当ですか?って、うろたえるだろうな。
どっちの答えでも想像できる反応に、思わず笑みがこぼれた。
「なっ何でそこで笑うんですかっ!?」
「僕ってそんなに弱そうに見える?」
「えっ?見えませんけど…」
「だったら、何で心配なんてするのさ。」
「なんでって…」
決まってるじゃないか。
僕が、いらないからだ。
「沖田さんが、大好きだからですよ。」
「……君、本気で言ってるの?」
予想だにしなかった言葉に驚いた。
所詮、その場しのぎの言葉に決まってるのに、心が弾んだ自分にも驚いた。
「本気ですよ?」
その素直さって、たまにすごく残酷だなって思う。
「じゃあ、責任とってよ。」
「えっ?何のですか?」
「なんのって──」
「おい!総司!
てめぇは何してやがるっ。寝てろって言っただろうが。」
「いいところなんですから、邪魔しないでくれます?」
そうだよ。
土方さんは、いっつもこうだ。
鬼の形相で追いかけてくるのが楽しくて、僕は逃げる。