NOVEL--小説【振】

□2009年阿部誕【榛阿】
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 夜、帰宅した俺を待ち受けていたもの。それは、放課後の練習の疲れなど一気に吹き飛ばす威力を持っていた。
「・・・な、なんだ・・・、これ・・・!」
 俺の部屋の机に置かれていたもの、それはバラの花束だった。



『死ぬほど恋いこがれています』



「母さん、部屋のあれ、なんだよ!?」
「夕方宅配で届いたのよ。差出人の『榛名元希』って、あの榛名くんよね?」
「え、なん、で・・・」
「なんでって今日タカの誕生日だから送ってくれたんじゃない?なかなか面白い誕生日プレゼントじゃない。後でお礼言っておきなさいよ。そうだ、ケーキ買っておいてあげたから後で食べ・・・」
「ちょっと出かけて来る!!」
「え、ちょっと、タカ!?」
 俺の脚は考えるより先に榛名の家へ向かっていた。



 そして今、俺は榛名の家の前、正確には榛名の家がある団地の前にいる。
「思わず勢いのまま来ちまったけど・・・」
 ここまで来て言うのも何だが、夜分に人様の家を訪ねる、と言うのも抵抗がある。どうしようかと、考えあぐねたが、すぐに携帯を持って来ていたことを思い出した。
 俺は携帯を取り出し、電話帳から「榛名元希」のページを無意識に開き、通話ボタンを押した。頻繁にメールや電話をしているため、指が完全に覚えてしまっていた。
 さすがにこの時間だ。向こうも練習が終わって帰宅しているだろう。ちょうど風呂に入っていたらどうしよう。・・・いや、いつもならこの時間に風呂に入ることはないはずだ。
 五回ほどコール音を聞いたが、出る気配はない。少し待ってかけ直そうか、と思っていた所で、いきなりコール音が途切れた。
『・・・タカヤ?どうしんたんだよ、こんな時間に。つーか、今俺が電話しようと思ってたのに!!いきなりかけて来るから、ビックリして取るのに時間かかったじゃねぇか!』
「俺、今家の前にいます」
『はぁ?』
「だから、元希さんの家の前・・・て言うか、団地の前にいます」
『・・・っ!』
 いきなり通話が途切れた。かと思うと、二分後、携帯を手にした榛名が息を切らしてやって来た。
「・・・っ、タカ、ヤ、なんで・・・っ!」
「それはこっちの台詞です」
「・・・は?」
 榛名はまだ苦しそうに息を吐いている。よっぽど全力で階段をかけ降りたのだろう。全力でここに向かって来た俺のように?
「あの花束です。なんの冗談ですか」
「じょっ、冗談なんかじゃねーよ!」
 ようやく息が落ち着いて来たらしく、いつもの威勢のいい声が返って来た。今は夜で、ここは住宅街だと言うことを思い出してほしいと思いつつも、今は確認したかったことを先に確認することにする。
「じゃあ、なんであんなもの送って来たんですか」
 決して怒っている訳ではないのに、照れ隠しでつい、つっけんどんな言い方になってしまう。
「なんでって・・・。クラスの奴らに、恋人に誕生日プレゼント送るならなにがいいか、って聞いたら『バラの花束がいい』って言うから・・・」
「俺と付き合ってるって言ったんですか!?」
 今は夜で、ここは住宅街。・・・と言うことを忘れてつい、声を荒げてしまう。
 榛名と付き合ってると思われることが嫌なんじゃない。ただ、男同士と言うことで、どうしても周りの目を気にしてしまう俺は、出来るだけ榛名との付き合いを隠そうとしていた。
「言ってねーよ。お前そう言うの気にするし・・・。『もし』の話で言ってみただけだって。そしたら、そう言うから・・・」
 どんな会話が繰り広げられたかは知らないが、クラスメイトはまさか榛名が本気で言っているとも思わず、冗談半分でベタのことを言ってみたのだろう。まして、相手が男などとは思いもしなかったに違いない。しかし、前の前にいる色々な意味でバカ正直な恋人は、その言葉を素直に受け取った。
「なんだよ・・・!嬉しかっただろ!」
 呆れて物が言えなかった。もちろん、一概にとは言えないが、普通男がバラの花束を貰って喜ぶだろうか。少なくとも、俺の性格を考えたら分かりそうなものだが。
「すっげぇ悩んだんだぞ!11日は平日だから、普通考えたら会えないし、だから郵便で送れる物って・・・。タカヤが喜びそうな物なんて、野球関係以外でなかなか思いつかねーし・・・。でも、俺ら今は一応ライバル校同士じゃん?だから野球関係の物はマズいかと思って、だから何にしようかって、すっげー悩んで、悩んでたらよく分かんなくなったから、クラスの奴にそれとなく聞いてみたんだよっ、悪かったなっ!!」
 ・・・だが、俺は嬉しさで顔が真っ赤になっていた。目の前の榛名の様子を見たら分かる。榛名がどれだけ俺の誕生日について、俺について考えてくれたか。その気持ちが本当に嬉しくて。
「元希さん」
「・・・んだよ」
「ありがとう、ございます。・・・・・・嬉しかったです」
 あ、好きだ。
 俺の言葉を聞いて、一気に笑顔になる榛名を見て、思わず心の中でそう呟いた。どんなに俺様で、自己中でも、・・・俺はこの人が好きなんだ。
 そう思った瞬間、俺はいつの間にか・・・榛名にキスをしていた。
「・・・んっ・・・」
 どちらともなく、舌が絡まり合う。
「・・・ん、っ・・・」
 熱い。コートを羽織っているとは言え、今は12月。外気は十分寒いはずなのに、熱かった。
 不意に、ポケットに入れた携帯から振動を感じた。
 俺たちは、ようやく互いの舌を開放した。
「誰だよ?」
 キスの余韻のせいか、どことなく榛名の声が、姿が色っぽい。
「あ、お母さんからメール・・・」
 そう言えば、黙って出て来たままだった。
「そっか、じゃあお前もう帰れよ。お前んとこも明日練習あんだろ?」
「あ、はい・・・」
 確かに明日のことを考えるともう帰った方がいいのかもしれない。でも、もう少し一緒にいたいと思うのは俺だけなんだろうか。
「・・・んて顔してんだよ」
「え?」
「いや、なんでもねー。それより、お前、ちゃんと花の色見たのかよ」
「花ってあのバラのですか?えーと赤、でしたよね?」
「お前本当にちゃんと見たのかよ。赤じゃねぇよ、紅色だよ」
「赤も紅色も変わんねーだろ!」
「変わるっつーの!・・・は、花屋が言ってたんだよ」
「・・・?何をですか?」
「だーかーらー!『恋人に贈るなら個人的には紅色がオススメ』だとかって・・・」
 いまいち、榛名が何を言おうとしているのか分からない。確かに紅色と赤色は厳密に言えば同じ色ではないのかもしれないが、同じ赤系統と言う点ではそう大した違いでもないだろう。すると、榛名があのバラの紅色のように頬を染めて、ようやく聞き取れるくらいの声で、こう言った。
「・・・花言葉」
「花言葉?」
 すると、今度は急に怒鳴りだした。
「お前、そのくらい分かれよ!!」
「わっかんねーよ!なんだよ、言いたいことあるなら直接言ってくれればいいじゃないですか!!」
「言えっかよ!こんなこと!」
「はぁ?」
 どうしても言う気がないらしい。もうすぐ11日は終わる。誕生日と言うこの特権を最後くらい行使してもいいだろう。
「誕生日!」
「・・・え?」
「今日は俺の誕生日なんですよ!俺のお願い、聞いてくれてもいいんじゃないですか!!」
「・・・っ!」
 俺は知っている。結局この人は、俺に弱いんだってことを。こんな俺をズルいと思うだろうか。
「・・・います」
 けれど俺だって、この人に弱いのは同じ。
「死ぬほど恋いこがれています、だよ!!」
 そう、俺たちは似たもの同士なんだ。
 言い終えた榛名は、「どうだ、言ってやったぞ」と言わんばかりに顔を紅色に染めて、満足気にしている。
 そう言った時、再び、ポケットの振動を感じる。何も言わずに家を飛び出して来た。心配しているのかもしれない。
「・・・じゃ、じゃあ、親も心配してるみたいだし、俺、もう、帰りますんで」
「・・・お、おー」
 そうして歩き出そうとしたところで急に「タカヤ!」と呼びかけられる。振り向くと榛名は満面の笑みでこう言った。
「誕生日おめでとう!来年も、その次もぜってー祝ってやっからな!!」
 だから今は夜で、ここは住宅街なんだって。ちょっとはそのことも考えろよ──と言いたかったはずなのに、俺の口はいつの間にかこう言っていた。
「来年の・・・、来年の元希さんの誕生日には俺が紅色のバラの花束贈ってやりますからね!」
 この時、俺はどんな顔をしていたのか分からない。その真実を知るのは世界でただ一人、俺の恋人だけだ。

Happy Birth Day Dear Takaya・Abe !!





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 と言うことで、やややっつけだけどで阿部誕!おめでとう、隆也!!やっつけって言っても一応ちゃんと書いたからねっ!ただ、久しぶりに二次書いたからか(一次はちょいちょい書いてんだけど)難しいですね、二次って!一次は自分が生み出したキャラクタだから当然自分がそのキャラクタのことを把握してるけど、二次は既存のキャラクタをちゃんと理解していないと書けないってところがね。まあ、逆に言えば、自分でキャラクタを考えなくていいから楽っちゃ楽だけど、大変でもあります。
 ちなみに、これ書くにあたって一応バラの花束の値段確認しましたけど、十本で三千円台らしいですね。高っ!てかよくそんな金あったな榛名wwきっとあれだな、阿部の誕生日のために貯めてたんだな、うん!
 あと、バラの花言葉ですが、赤でも普通に「貴方を愛してます」って言う意味があるんですが(これは有名ですね)、「死ぬほど恋いこがれています」って言う愛しまくってる感がツボったので此方を採用w
しかし男が花言葉興味あるのかよ(もちろん一概にそうとは言えませんが)、って言うwまあ榛名も別に花言葉を特別意識した訳ではなくて、花を買いに行ったら花屋さんにそう言われたからそれを気に入って・・・って言う設定です。
 しかし、どうも私の書く視点人物は思考が乙女になりがちなので気をつけたつもりなんですけど、どうでしょう?何だかんだで少女漫画っぽくなってしまったようなw漫画と言えば、やっつけで書いたこともあって、文体がわりと漫画的になっちゃってますね。
 そういや、これ書くにあたって阿部親子の会話確認するためにコミックス軽く読み直したんですが、阿部ってお母さんのことを「お母さん」って呼んでるんだね、かわいいなおい!てっきり「母さん」って呼んでるイメージだったからww
 あと、阿部の声が大きいから気が弱い奴はビビっちゃうんだよ、的な沖くんとの会話見て思ったけど、阿部の声が大きいのは元々の性格もあるだろうけど、シニア時代に榛名と言い争いをしてたせいで怒鳴るようになっちゃったのもあると思うw普通に言っただけじゃ聞かないだろうしな、榛名はw(普通は聞かなくてもあれかもしれんが。)
 そう思うと、中学生と言う多感な年頃を二年間も一緒に過ごした榛名は阿部の人格形成に大きな影響を与えたよね!もちろん、榛名も阿部のおかげで立ち直った訳だし、お互いの与えた影響は大きいなあ、と!(良いか悪いかは別にして←特に阿部。いやいや元希さんと出会えてよかったはずだ!)
 しかし、一人称で書いたのはいいんですが、阿部の榛名のモノローグでの呼び方に迷いました。「元希さん」と呼ばせたいけど、くどくなるかなあ、と。(最近は三人称小説が多めなので一人称小説の書き方をちょっと忘れてます。)何より、原作じゃ、阿部は榛名のことをモノローグでは「榛名」って呼んでるんですよね。そりゃ原作と二次じゃ関係性違うのは分かるけど、それなりに原作準拠でいきたいし・・・。ってことで今回はモノローグでは「榛名」、実際呼ぶときは「元希さん」にしてます。てか原作でもそうだしね。後は原作では「アンタ」って呼ぶことが多い気もするが。あれ、だよね!普段は照れて名前を呼べないけど(たとえモノローグであっても)、榛名の前だとさすがに呼び捨てはあれって言うか、感情が高ぶるとつい元希さんって呼んじゃうんだよね!
 ちなみに、最近ハルアベ熱が熱いのは明らかに原作とアニメ再放送のWコンボのせいです!原作でちょうどハルアベ話が終わった後にちょうどアニメ再放送で戸田北回とか!狙ってるとしか思えないwwてか、阿部の誕生日にちょうど、原作の誕生日回とかスゴいなw
 そしてこれ書いた後思わず、原作読み直しちゃいましたよっ!本誌の方ねっ!あれもう何回読んでも冷静に読めないvvコミックスに収録されるのいつになるかなあ。
 と言うかもう、ハルアベ好きすぎる!好きすぎてヤバい!!
 ・・・と、もう単なるハルアベ語りになりましたが、誕生日おめでとう、タカヤ!!(元希さん風にv)

20091211

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