07/08の日記
00:14
七夕でした。
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ぎりぎり間に合いませんでした(ぎゃふん)が、小話を久しぶりに。
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「七夕かぁ。毎回必ず雨だから、嫌いだったなぁ」
成歩堂が呟くように言った。
先ほど通り過ぎた美容院の前に飾られた、いくつもの短冊が提げられた笹の葉を目にしたからだろう。
二人で飲んだ帰り道、深夜の商店街の路面は濡れている。
幸いにも雨はあがっていたが、さっきまで降っていた名残だろう、空は相変わらず分厚い雲に覆われていた。
「別に、空の上にいる彦星と織姫は、いくら地上で雨が降ろうと、関係なく会えるのではないか?」
そう言えば、成歩堂は横目でこちらを見ると、ゆるゆると首を振った。
「そういうことじゃなくてさ。晴れてくれないと、願いが叶わない気がして嫌だったんだよ」
「願い?」
確かに、笹の葉に括られたいくつもの短冊には、それぞれに願いが書かれているものだが。
成歩堂という男は、どこまでも現実主義なところがあるため、まさか短冊に願いを込めるなどといった経験があるとは思わなかった。
そのようなこちらの様子を見て、ますます目を眇めさせる彼は。
「昔の話だけど。自分の力じゃどうにもならないことはあるって、思い知らされたからね。神頼みならぬ短冊頼みってやつで」
お前に会えますようにってさ!
願った時期もあったんだよっ、悪いか!
酔った勢いもあったのだろうか。
叫ぶように言ったその言葉は、分厚い雲に覆われた空に放たれた。
「……悪くは、ないな」
ああ、まったくもって悪くない。
むしろ。
「わぁあっ、いまなんか、すっごい今さら恥ずかしくなってきたいまの無し! 忘れろッ」
そのような無理なお願いを聞く気は、さらさら無いので。
ぶんぶんと振り回すその手を取って、素早くその指先に口づけた。
「こうして会えたのだから……短冊に書いた願いはきちんと、雨だろうと叶うという証明がされた、ということで良いのではないか?」
そう言えば、丸い瞳を更に見開き、しばらくは言葉もなかった彼だったが。
そこは世紀のツッコミ男である。
「や、どう考えても僕の執念と努力のタマモノだろ」
という、なんとも色気のない現実的な言葉が返るので。
そんな成歩堂だからこそ、好きだと改めて感じてしまう、私もしたたかに酔っていたようだ。
***
うふふ、この二人に酔いまくってるのは私です(←)。
ということで、少しでも喜んで頂ければ幸いでっす。
お休みなさいませー。
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