短編倉庫
□その名前を
1ﾍﾟｰｼﾞ/7ﾍﾟｰｼﾞ
なるほど君は、とっても冷静な男の人だってこと、あたしは知ってる。
周囲からは、刑事事件を主に扱って無罪判決を執念で勝ち取る（ように見える）、若手熱血弁護士、なんて呼ばれてるけど。
熱血なんて、なるほど君のどこにそんなものが？ って聞きたくなる。
優しいことは確かだよ。
困ってたら相談すれば何とかしようと動いてくれるし（結果が伴わないことも多いけど）、何だかんだ文句言いながらもラーメン奢ってくれるし。
でも、ツッコミは容赦ないし、現実主義者でトノサマンをどれだけお勧めして見せても、感想は「ふぅん」で終了だし。
なにより、あたしたちがどれだけ無茶なことを言っても、ひどく焦ったり困ったりしてるように見せかけて、実はとても客観的に受け止めて対応してるってこと、あたしはちゃんと理解できてるんだから。
だから、なるほど君がホントに焦ったり困ったりすることなんて、無いんじゃないか、なんて思ってたりした。
だけどね。
その名前を