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□休日シリーズ「朝」
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 休日の朝。
 私は息を顰める。


 ふ……と意識が浮上し、目を開ければそこには。
 親友で戦友で、何よりかけがえのない存在が、すぅすぅと穏やかな寝息をたてていた。
 私の左側にぴったりと、寄り添うように眠っている。
 いつもキリリとした特徴のある眉が、今はゆるく下がっていて、ここが安心できる場所なのだと教えてくれていた。


「……」


 言葉も無く、その顔を見つめる朝の数分。

 やわらかな陽射しの中で、君の無防備な顔を一番最初に目にできるという幸福を、ただ享受するひと時。
 私は右腕をそろりと動かして、彼の眠りを妨げないようにゆっくり、ゆっくりと。
 細心の注意を払いながら、そっと。
 穏やかな呼吸を繰り返す、その頬に触れる。


 私は、この瞬間が。


 たまらなく愛しく、そして……怖い。

 触れてしまえば、まるで夢のように儚く消え去ってしまいそうで。
 けれど触れないままでは、確かな現実としてこの光景を受け止めることができずにいて。


 杞憂だと、心のどこかで嗤う声がする。
 なのに不安だと、心の奥底からすすり泣く声が木霊する。


 休日の朝は、こうして。
 隣で眠る成歩堂にその答えを委ねるのだ。


「……ん…?」


 いつも、そっと触れるだけにとどめているはずなのに、彼は気配に敏感なのか、数分もしないうちに目を覚ましてしまう。
 私はそれが心苦しく、申し訳ないと思うのだが。

「んん……みつるぎ、おはよー」

 とろりとした目を数度瞬かせ、舌足らずな声でうっとりと名を呼んでくれるから。


「おはよう」


 そう返して、いつものように。
 彼の額に口づけた。
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