短編倉庫

□休日シリーズ「昼」
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 休日の昼下がり。

「御剣、膝貸して」

 そう言って、成歩堂は無邪気に私の膝の上に頭を乗せた。

「……重いのだが」

 それに彼のツンツンと尖った髪が微妙に痛い。

「いーじゃんいーじゃん、一度やってみたかったんだよね、膝枕」

 成歩堂とは長い付き合いになるが、こういう時の彼は本当に無防備で、同じ年の成人男性とはとても思えない。

「女性の柔らかな膝とはわけが違うというのに……硬いし不安定なだけだろう?」

 そう聞けば、彼は何がおかしいのかくすくすと笑って。

「御剣の膝ってのがいいんだよ。プレミアものだろ、それだけで」

 プレミア……?
 確かに成歩堂以外で、私の膝の上に頭を乗せようなどと考える人間はいないだろう。

「そうか。ならば、私も君意外の頭を乗せるつもりはないので、君の存在こそがプレミアものということになるな」

 頷きながらそう告げると。
 彼は膝の上で大きな目を更に大きく見開いた。
 それから、見る見るうちに顔が朱に染まり。

「…も、ホントお前、やだ。ナニそれ」

 両腕を交差させて、その顔を隠しながら、にも関わらず私の膝から「やだ」と言うわりには頭を動かす気は無いらしい。

「成歩堂」

 呼びかければ、うーと唸りながら「なに」と聞いてくる。
 私はその、あまりにも可愛らしい君に。

「こんな膝で良いのなら、君が望めばいつでも貸そう。だがこの体勢は、私にとって少し困りものだということも判明した」
「?」

 首を傾げて見上げてくる、その瞳に、その頬に、その唇に。

「口づけをしたいのだが、どうにも届かない。そろそろ起きてはくれまいか」


 正直な気持ちを伝えただけなのだが。

 成歩堂は殊更に顔を赤らめて、嫌がらせのようにますます顔を膝に埋めてきた。
 そうして、彼の返答は。




「……日が落ちたらね」

 どうやら、ノーでは無いようだ。
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