片恋日和
□片恋日和_06
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泣く資格なんてどこにもない、そう思うそばから、視界が歪む。
服の上からぎゅっと、握るというより掴むように胸を押さえた。
「っ、……御剣…」
息が苦しくて、呼吸が荒くなる合間に、僕はただその名前を呼んだ。
ごめんなさい、ごめん。
言葉にならない謝罪たちが、脳内で溢れて狂い出しそうなほどで。
僕はそれらを振り切るように、頭を振った。
いま、自分がしなくちゃいけないことは、なんだ。
この眼前に迫る自分の罪深さを、把握した上でやるべきことは。
泣いてる場合じゃないだろう。
後悔している時間なんてない。
今すぐに行動しなければ、きっと僕は永遠に、御剣を失うことになるんだから。
人生は選択肢に満ちていて、でもそれ以上に、出逢いというものによって随分と左右されるものだと思う。
だって僕こそが御剣と出逢ったことで、それこそ『いま』ここに居る僕が成立しているんだ。
彼が僕の人生に存在しなかったら、なんて、考えるだけでも恐ろしい。
なんて寂しい、わびしい人生だろう。
そうしてきっと、その寂しさやわびしさに、気づくことすらできない、なんて。
「そんなの……絶対に嫌だ」
気がつけばそう、唸るような声で呟いていた。
それから、もう一度しっかりと、画面に映し出された言葉のひとつひとつを、胸に刻むように読む。
この文章が投稿されてから、既に二時間ほど経っていて、『辛いですね。似たような経験が私にもあります。思わず泣いてしまいました』といった感想が、いくつか寄せられていた。
僕は少し考えてから、画面の右下にある『感想を書く』ボタンをクリックした。
もしかしたら、もう遅いのかもしれない。
最後の投稿から二時間以上も経って、いちいち感想なんて、見てない可能性の方がずっと高い。
でも、ブログから届けられた想い、というのが紛れもない事実なら。
僕もやっぱり、こういう形で返したいと、そう思った。
だから。