ソレが無いのは致命的!

□裏・ソレ無い:01
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 照明の灯りを最小限に落とした室内で、ただ己の荒い呼吸音と、淫靡な濡れた音だけが響く。

 硬く屹立したモノが触れるのは、脱力したままの彼の、手。
 決してその手に力が込められることはなく、ただこちらから押しつけるだけのもどかしい快楽しか、得られぬというのに。
 深く寝入っているのだろう、乱れのない寝息をたてる成歩堂のその顔を、至近距離から眺めつつ己を慰める行為に没頭する。

「…っ、……は」

 その大きな黒い瞳はけれど、しっかりと閉じられた瞼に遮られ、決して私を見ない。
 何も知らず眠る彼とは目が合うことはなく、けれどだからこそ、この剥き出しの情欲をぶつけることができるのだ。

「……、く、ぅ…!」

 あまりの背徳的な状況にひどく昂ぶり、喘ぎと呻きの中間のような音が、喉の奥から競り上がる。
 とうの昔に焼き切れた理性の片隅で、限界が近いことを悟るが、彼の手に擦りつけるソレを離すことはしなかった。

 そのまま、汚れてしまえばいい、と。
 この、どうにも行き場のない、劣情と欲望で、塗れてしまえばいいのだ、と。
 どうせその心を手にすることができぬのならば、せめて……その体の一部だけでも。

 そのような薄暗い想いに囚われて、私はただ己の快楽を追った。
 やがて幾らもしないうちに果てへと達し、勢いよく飛び散った白濁は、私の昏い欲望を満たすかのように成歩堂の手へと滴り落ちる。


「……っ、は……成歩堂…」


 いまだ荒れたままの呼吸の合間に、告げられぬ愛しさを込めてその名を呼んだ。
 その声は、決して、成歩堂に届くものではなかった、はずだった。

 はずだったのだが……。
 ふるりとその瞼が揺れた、かと思えばゆっくりと開いていくその様に、息を呑んだ。
 そうして、大きく見開かれた黒い瞳と、目が合ってしまった……しまったのだ。


「……え…?」


 次いでそのわななく唇から、掠れた疑問の声が響けば、それは死刑宣告のようにこの胸に突き刺さった。
 沈黙は一瞬、その後には。




「……、っぎゃぁあああああ!!!!」


 成歩堂の、どこまでも悲痛な叫びが響き渡ったことは、言うまでもない。







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