青い鳥
□0.始まりの終わり
1ページ/1ページ
御剣が大好きだった。
もちろん、彼を意識したきっかけはあの学級裁判で、それ以前は何となく近寄りがたいクラスメイト、ぐらいの認識だったんだけど。
改めて僕を救ってくれた彼をきちんと把握すれば、小学生の御剣はそりゃもう儚げで可憐で可愛らしかった。
なのに口を開けば大人びた口調で得意気に法律の話なんてし出して、周囲にドン引きされるとこっそり一人で落ち込んでたっけ。
ヒーロー戦隊ものが本当はすっごい好きなくせに、素直に好きって言えなくてぐっと眉間に皺を寄せて……ああ、あの頃からあったんだよな、皺を寄せるクセ。
見かねた僕が、我ながら絶妙なタイミングで「レンタルしたやつ一緒に見ようよ、僕、御剣と一緒に見たいな!」と言えば、その表情がぱぁって明るくなって、眉も眦も一瞬にして緩く下がっていって。
なのに、その唇からは「そ、そんなに言うなら、仕方がないな!」なんて、頬を紅潮させながら言うもんだから。
僕はもう、このとんでもなく可愛い人間を目の前にして、笑顔が溢れてしょうがなかった。
何を言われても、何を聞いてもにこにこと笑う僕を目にして、隣の矢張からは「成歩堂、お前きもちわりーぞ…?」とか、今にして思えば結構ヒドイこと言われたっけ。
誰にどう思われようと、僕の「御剣が好き」っていう想いは、揺らがなかった。
でも、その気持ちが。
まさか十五年も経ってから、自分自身を追いつめるものに変化するだなんて。
これっぽっちも、一ミクロンだって。
僕は想像もしてなかった。
青い鳥