前途多難部屋

□専属相談窓口
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 事務所に突然押し掛けてきたと思ったら。
 挨拶もそこそこに、ものすっごい深刻そうな顔してズズイと近寄られた。

 うんあの、近い近い顔近い。

 迫力のある美形、という言葉はこいつのためにあるんだろうと思わせる、その端整な顔の持ち主は僕の幼馴染にして大切な親友だった。
 数日前に矢張と三人で飲んで以来だから、そんなに久しぶりでもないその顔は、どうしてなのか苦悶に満ちている。

「えーと、なに、どうした?」

 何だか切羽詰まってるような御剣の、至近距離にある肩に手を当てて、当然の疑問を投げかけた。
 すると、みるみるうちにその眉間に、既に入ってるシワの数が数本増えていって。
 淡い想いを寄せる女性なら逃げ出し、泣く子はもっと泣くだろうと容易に想像できるほど、壮絶な顔になった。

 ああ、いつも勿体無いって言ってるのに……なんて、どこかぼんやりそんなことを思っていたら。


「私は、やはり病気なのだろうか……」


 いつも理路整然と言葉を組み立てるこいつからは考えられないような、脈絡のない唐突な問いを投げかけられた。
 もう、ホントに意味がわからない。

 わからないけど。


「とりあえず、そこ座って深呼吸しようか。その間に日本茶入れてくるから待ってて」


 あくまで表面上の話だけど、常に落ち着き払って優雅に振る舞うことを心がけている御剣が、いつになく追い詰められて混乱しているようだ、ってことだけはわかったから。
 その口から発された不穏な単語も、彼を大切に想う僕にとっては絶対に聞き逃せないものでもあるし。


 きちんと話を聞くからとにかく落ち着け、そう言って僕は給湯室に向かった。







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