宝物殿

□ある朝の風景
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休日の朝、僕は珍しく早く目を覚ました。
体に回された逞しい腕の温もりに浸りながら、ゆっくり目を開く。

柔らかな前髪に縁取られた最愛の人の寝顔がそこにあった。
眉間にいつもの皺はなく、いつも厳しく結ばれている口元は緩やかにひらいて、穏やかな寝息をたてている。

「やっぱり窶れたよな〜、お前。」

静かに眠っている恋人を起こさないように、口の中で呟く。

最近また大きな事件に立て続けに巻き込まれた御剣は、危うく検事バッジを失うところだったらしい。
お父さんの助手を務めていたというある弁護士さんから、いっそ弁護士になればどうかという話があったらしいけど、御剣は断ったと言っていた。

-ん〜やっぱり僕も、法廷では向かい合って立ちたいや。

僕は自分の腰に巻き付いた御剣の腕をそっと外し、クイーンサイズのベッドの端まで寄って眠る御剣の全身を眺めた。

向かい合った検察席に背筋を伸ばして凛と立ち、まっすぐに前を見据えて真実を追究するその姿。
僕は脳裏に浮かんだその凛々しい姿ににっこり微笑んでまた微睡みに落ちていった。


*********

「む…?」

ゆるゆると眠りから覚醒した私は、腕の中に収めて眠ったはずの恋人の姿がないのに気付いた。

「成歩堂…?」
ふと見ると、なぜだかベッドの一番端っこに此方に背を向けて眠っている。
「なんであんなところで寝ているのだ、やつは」

私は手を伸ばし、成歩堂の肩を軽く揺さぶった。
「こら、成歩堂。起きないか。」

「…ん〜?」
むずかるように目を擦り、成歩堂の黒い瞳が私を捉える。

「あ、みつるぎ〜」

へらッと笑うと、成歩堂はベッドの端から私に向かいコロコロと転がってきた。
ポスッと私の胸元に収まりにっこり笑う。
「おはよ、みつるぎ」

………………可愛い。

朝から身体の芯が疼くような不意打ちにドキドキしながら、腕の中の愛しい生き物にキスの雨を降らせる。

「くすぐったいよ、みつるぎ〜」

クスクス笑いながら身を捩る成歩堂の両手を頭上にまとめて拘束しながら、私は尋問を開始した。

「なぜあんなに離れた場所で眠っていたのだ?」

「え〜?言わなきゃだめ?」

「黙秘権は認めない。」
言いながら成歩堂の首筋に唇を這わせば、途端に吐息に甘いものが混じり始める。

「…ッあン…別に…っあ…たいした理由じゃ…な…んんッ…」

「ならば説明を求める」

「んも〜、お前の全身が見たかっただけなんだってば。少し離れて眺めてるうちに眠っちゃって……ひゃん!」

あまりにも可愛らしいその理由に、どうにも抑えが聞かなくなった私は、朝食代わりに愛しい成歩堂を美味しくいただくことにした。




「も〜、信じられない。朝から盛るなよな〜」

私の腕の中で可愛らしく口を尖らせる恋人の、鼻のてっぺんをはむはむとかじりながら私は笑って答える。

「キミが可愛いのが悪い」

「なんだよそれ、理由になってないぞ」

「まぁいいではないか。今日は休日だ。ゆっくりキミを楽しませてくれ。」

成歩堂をきつく抱き寄せ、また熱いキスをしようとした途端、成歩堂の腹が盛大に鳴った。

「…お腹すいた…。って、お前笑いすぎ。」

声を出さず背を丸めて笑い続ける私に、成歩堂の不貞腐れた声がする。

「…っくっくっく、では、シャワーを浴びて朝食を食べに行こうか。」

私は成歩堂の額に軽く口付けると、その手をとってバスルームへエスコートした。





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