REBORN!

□愛を込めて
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「あ、こっちこっち!獄寺君!」

絶対に迷惑だけはかけるなとしがみ付く隼人をベッドに気絶させて、並盛中学へとたどり着いた。
いつもより人がわさわさと蠢いている。
手を振ってくるのは最初見たときよりもずいぶんとスレてしまったボンゴレデーチモ。

「獄寺ー、お前遅いって!遅れるかと思ったのな」

肩に手を置くとぐいぐいと前に押された。
流されるまま隼人の教室にたどり着く。
中にはがやがやと人の声がする。
引き戸をがらりと開ければ、中にいたガキどもが一斉に駆け寄ってきた。

「獄寺く〜ん!」

主にメス。

「大丈夫?風邪引いちゃったんじゃないかってすっごく心配してたの!」

更にメス。
どうやら隼人は俺にそっくりなためがやたらとモテるようだ(←)。
しかし頭の悪そうなやつばっかりだ。
本命には選ばないほうがいいぞ、隼人。

「あ、大丈夫だから!先にセットとかの用意しちゃってくれるかな?」

俺をかばうように両手をかざし、前に出る綱吉。
関心関心。

「これ、台本です。さっと目を通してください。・・あ、日本語大丈夫ですよね?」

小さい声で囁きながら後ろでに渡された本を手に取る。
あらかたの日本語は隼人に教わった。
肯定の意味で首を縦に振ると、にっこりと笑った。
しかしこれはなんというか、手作り感満載だな。
まぁ逆にそれが子供らしくていいというか、一応努力が見えるな。
これは確かに主役降板の辞退はかわいそうかもしれない。

「獄寺く〜ん!私たち先に行ってるね!」

隼人の脳裏にも記憶になかった女生徒が叫んだが、特に返事することもないだろう。
サイズの合っていない本をパラパラとめくり、内容を流し読みした。
ふ、と目に入った文章に、指がぴくりと動いたが、気付かなかったことにする。

「やれそうですか?」

困ったように笑う綱吉は制服のままだ。
手に持っているのは衣装だろうか?
どうぞ、と差し出してきたところを見ると、これがロミオとやらの衣装らしい。
衣装、とは言っても、少しレースのついたカッターシャツにマントくらいなのだが。

「舞台に上がったらカンペ出すんで、それの通り読んでください」
「かんぺ?」

セリフの書かれた紙を掲げられる。
なるほど、それを見てそのセリフそのまんま喋ればいいと。
なら楽そうだ。
しかし読めば読むほどキザな野郎だ。
隼人よくこんな役引き受けたな。

「けっこう短縮したやつで、多分二十分くらいで終わると思います」

ずいぶんと楽しそうに言う綱吉を眺めると、ああ、これに負けたなあいつ、と予想がつく。
と、急にガララと音を立てて扉が開いた。

「おーいツナ、次、練習俺たちの番だってよ」

雨の守護者の山本武だ。
人当たりのいい表情のこいつはどうやら何かの役を任されているらしい。
えーと、見た感じ衛兵か?

「ああうん、じゃぁ行きま・・・行こっか、獄寺君」
「はい、十代目」

山本武は俺が代わりをすることを知らないらしい。

「ん?あれ?獄寺」

さすがに気付くか?
アホだけど鋭そうだもんなこいつ。

「なんか声違うな?風邪でも引いてんのか?」
「ああ、声が出ねぇわけじゃねぇ。なんでもねぇよ」

やっぱただのアホか。
そして体育館。
練習とはいっても、どちらかといえば段取りの確認のようなものだった。
多少ぎこちなくはあったものの、これでおおよその役の動きは把握した。
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