REBORN!

□祭囃子
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「お、おいジョット!歩くのはや・・っ」

なれない履物にもたつきながらも、手をぐいぐいと引っ張るジョットになんとかついていく。
祭りの会場にはたくさんの人がいて、浴衣姿もいれば学生服も、私服姿も見受けられる。
ジャリ、と校庭の砂を踏み鳴らしながら出店を見渡す。
学生らしき子供たちと話している大人は教師だろうか。
どっちにせよ、楽しそうだ。

「G、まずはどれがいい?やはり最初は射的か?お前は射撃が得意だからな」

無表情ながらどこか浮き足立ったジョットは、おもちゃのライフルの置かれた出店を指差した。
珍しく非常に機嫌がいい。
なんだかんだいって、幼馴染が楽しそうだとGもうれしい。
やたらと気になる周囲の視線も、まぁ許せる気がした。

「たまにはお前もやってみろよ」

小銭を渡してライフルを取ると、弾は専用のコルクになっている。
なるほど、これであの並べられた景品を打ち抜くわけだ。
並んでいるのをざっと見渡し、その中に電子機器を見つける。

「俺は射撃はあまり得意じゃない。知ってるだろう」
「ああ、そうだな」

あれは確か隼人が少し欲しそうに見ていたおもちゃじゃなかったか?
ジョットに受け答えをしながら、GはCMを眺める獄寺を思い出す。
今日は無駄な電力を使ってしまったし、埋め合わせに落としてやるか。
Gはおもちゃの銃を握る手を強くし、一流のスナイパー顔負けのコントロールで見事に狙った品を落としていった。

「なんか射撃屋のおっさん泣いてたけどなんでだ??」

並んでいた景品で一番高かったWii、そしてiポッド等々めぼしいものを全て抱え込んだGが首を傾げる。
まだ夜になったばかりで、これから商売だったのに。
その射撃屋はもうぬいぐるみや駄菓子程度しか並んでいないのだった。

「よし、何か食べるか」

周りを見ると、色んなところから色んなにおいがした。
作っているものを見ても、あまり馴染みのないものが多い。

「どれがいい?チョコバナナか?そうかチョコバナナだな、それならこっちだ!」
「は?おい・・」

何も言っていないのに急に手を引いて歩き出すジョット。
チョコバナナというと、単純に考えてチョコに漬けられたバナナだろうか。
まぁあいそうな組み合わせではある。
チョコもバナナも嫌いじゃないし、素直についていくか。
そう思った矢先。

「あ、あれ?初代!?」

急に背後から声がかかる。
現代において亡霊でしかない二人に声をかけることができるのはこの世で七人しかいない。

「おお、綱吉。来ていたのか」
「ええそりゃぁ、俺たちの学校の夏祭りですからね・・・」

薄茶色の浴衣を着た綱吉は、手にりんご飴と水風船を持っている。
少し向こうには獄寺や山本の姿もあったが、二人は浴衣は着ていないようだ。
と、綱吉がGの持っていた袋に気付く。

「どうしたんですかそれ?大きいですけど・・・」
「Gが射撃で落とした景品だ。なかなか良さそうなものばかりだぞ」

袋を覗き込んだ綱吉が引きつった表情をする。
そういえばずいぶん前にも射撃屋で似たようなことしてた屋台泣かせがいたな。

「てめ、G!お前昨日俺のコーヒー勝手に飲んだだろ!」

こちらに気付いた獄寺が駆け寄ってくる。
するとなぜか周囲からどよめきが大きくなった。
ジョットはそんなこと気にしない性分だが、綱吉はどこか呆れたような、不機嫌そうな顔だ。

「あ?・・・ああ、だってお前いなかったからよ」
「いなかったじゃなくて風呂入ってたんだっつの・・・!」

咥えたタバコを噛み切りそうな勢いの獄寺に、持っていた袋を押し付けた。
がさ、と音を立てながら受け取った獄寺は中を覗き込んで表情が一気に明るくなった。

「こ、これどうしたんだよ!」
「なんか打ち落としたらくれるっつーからもらってきた」
「マジでか・・!十代目、今度一緒にやりましょう!」

ニコニコと笑顔を浮かべる獄寺にGは笑みを漏らした。
そのとき、野球部員と喋っていた山本がこちらに向かって手を振った。
駆け寄ってくる山本に、獄寺は明らかに表情をゆがめる。

「いやー、獄寺と獄寺の兄さん、すっげー目立ってんのな」
「兄さん!?」

予想外の言葉に素っ頓狂な声を上げる。
Gが周りを見渡すと、綱吉たちと同年代くらいの女の子がひそひそと小さな声で話しながら黄色い声を響かせている。

「あの人誰だろー、獄寺君に似てるよねー」
「お兄さんじゃない?ほら、獄寺君ってすっごく綺麗なお姉さんもいたし」
「カッコいいー」
「外人さんだね、獄寺君ってイタリア系だったよね確か」
「すごーい」
「あれ、でもあそこの金髪の人もカッコいいけど、誰かに似てない?」
「あー沢田にちょっと似てるかもー」

意外と的を突いていて少し面白い。
先祖なのだから似ていても不思議はないのだ。
キャーキャーと騒ぐ女の子を、嫌そうな目で睨む獄寺。
くすくすとGが小さく笑って獄寺を頭を撫でると、睨みつけながらも抵抗はされなかった。
が。

ぐいっ

急に反対の手を引っ張られて、そのまま歩き出した。
手を掴むそいつの表情は見えない。
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