REBORN!

□好きなんかじゃない
2ページ/5ページ

おかしい、何かが絶対におかしい。
ジョットは廊下をつかつかと歩きながら考えていた。
いつもマイペースな彼には珍しく、かなり早足気味で。

「プリーモ?どうしたのですか」

すぐ後ろをついてまわるスペードの言葉は耳に入っていないようだ。
大また、大手振り、早足。
今までにないくらいにジョットはイラついていた。

「何か物足りない」
「僕ならここにいます!」

急に立ち止まったジョットをひらりと避け、顔を除きこむ。
いつもと全く表情は変わらないが、かなりイラついているらしい。
目の前に現れた顔の房を握り、思いっきり後方へぶん投げた。
おかしな叫び声が聞こえたが、ジョットはあまり気にしていないようだ。

「・・・そういえばGはどこだ」

持っていた懐中時計を見ると、すでに三時半を回っている。
いつもなら三時過ぎに紅茶を運びに来るのに。

「文句を言ってやる」

ムスっとした表情でジョットはGの部屋に足を向けた。

「ふふふ、プリーモ・・・ツンデレなところも魅力的です」

なんか聞いたことあるようでないようなフレーズを言いながらスペードはゆらりと立ち上がった。
邪悪な笑い声をこだまさせながら、スペードもGの部屋へと急いだ。

「サボってたり仕事で忘れてたとか言ったら減給してやる」

Gの部屋の前についたジョットは、もう四十五分は過ぎようかという時計を見ながら呟いた。
というより、いつも紅茶やクッキーを運んでいたのはGの好意であって決められたことではないのだが。
口ではそういいつつも、Gが怒ると怖いのを知っているジョットは及び足になる。
音を立てないようにそーっと扉を開いて中の様子を見る。

「・・・?」

おかしい。
扉を開けてまっすぐ正面にある仕事机には誰も座っていない。
それどころか、仕事を残すのが嫌いなGが、小さな山をいくつか残している。
もしかして運びに来なかったのはなにか重大な事件に巻き込まれているからなのだろうか。
だとしたら自分はこんなことをしている場合ではないのでは。

カタ・・・。

冷や汗をかき出したころ、小さな食器の音が鳴った。
よくよく耳を凝らしてみれば、話し声が聞こえる。
しかもそれはGの声らしい。

(やはりいるんじゃないか)

自分の元へ来ることよりも重要な相手なのか。
無性にイラつく自分を不思議に思いながらも音を立てないようにそのまま中へ入った。
ソファから見える赤い頭の横にある色素の薄い金の髪。

「っっ!」

びき、と青筋が浮かびそうになった。
Gの隣に座って楽しそうに話しているのは、あの冷酷非情でGやランポウといった守るものに近づいてほしくない代名詞。
アラウディだった。
しかも覚えのある良い香りに誘われて覗き込んでみれば仲良く紅茶を入れてクッキーを食べているじゃないか。

「へー、これGが作ったの?」
「ああ、なんかやってみたら意外と楽しくてな」
「まぁ分からないことはないよ」

しかも手作りクッキーだと?
確かにGは昔から造形物を作るのが好きだったが、せっかく作ったクッキーをなぜアラウディごときに。

「おいしいね」
「そーかよ」
「で、さっきの話だけど」
「考えとく」

さっきの話?なんの話だ。
このとき、イラつきで少しおかしくなったジョットの頭が勝手な妄想の扉を開いた。

以下、ジョットの妄想。

『G、話があるんだ』
『な、なんだよアラウディ、真剣な顔して・・・』
『実は・・』
『・・・』
『・・僕は、初めて会ったときから・・Gのこtttttt

「許すかあああああああああああああああああ!!」

ドゴォ!という破壊音を立てながらクッキーの乗った机を拳で破壊。
紅茶のカップは皿と共に手に持っていたために無事だ。
Gは紅茶をすすり、アラウディは片手に持ったクッキーを一口齧った。
さすがに守護者として付き合いが長いせいか、この程度では驚かないらしい。

「いつからいたんだよ侵入者」

Gの言葉に顔をあげ、ちゃっかり机を潰すときに拾い上げたクッキーの並ぶバスケットを小脇に抱える。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ