こそっとコラボ

□ワグナリアの秘密
2ページ/6ページ

「あ、あの佐藤さん、何歳ですか?」

落ち着いたらしい小鳥遊が真剣な表情で静緒を撫でながら聞いた。
種島の頭にラフレシアを咲かせて満足した佐藤は短く24歳と答えた。

「いや佐藤さんじゃなくて、静緒ちゃんですよ!」
「おれ、5才」

小さな手を広げて答えた静緒にまたもハートを射抜かれた小鳥遊を佐藤は冷たい目で見つめた。
チョロい。
まさに今の小鳥遊を言い表すのにそれ以上の言葉は無かった。

「ごほん、てことは佐藤さんが19歳のときの子ですか!?」
「そういえば佐藤さん、一時期ずっと休んでたよね」

小鳥遊がバイトし出すよりも前だ。
かなり早いご出産で。
言わなくても分かるその視線に佐藤は短く息をついた。
そして次に来る質問も大体想像がつく。

「え、でも佐藤さんって独身ですよね?・・・静緒ちゃんの父親は?」

静緒に聞こえないように耳元で、それも静緒の耳を塞ぎながら聞く小鳥遊は、気遣いだけは一級品だ。
佐藤は少し目を伏せて、静緒をちらりと見た。
目元が少し父親に似ている静緒を見ると申し訳ないような、そうでもないような。

「驚くぞ」

ごくりと息を飲み込んで構える。
が、佐藤が口を開く前に小鳥遊が悲鳴をあげた。

「いっ、痛い痛い!」

咄嗟に痛みの走った手を見れば、ずっと耳を塞がれてふて腐れた静緒が小鳥遊の手を握り潰さんばかりに掴んでいた。
とても小学一年生とは思えない握力だ。
どういうことかと佐藤を見れば、なんでもないことのように言った。

「ちなみにどういうわけか静緒は特異な体質でな。この年で伊波とほぼ変わらないパワーがある」

以前は毎日、今は週一程度未だに伊波に殴られる小鳥遊には分かる。
電柱を破壊するほどの腕力があることが。

「い、伊波さんと!?四年前からさらに進化を遂げている伊波さんと!?」
「怒ると手がつけられん」
「かたなしくん!伊波ちゃんに失礼だよ!」

種島がぷりぷりと怒るのを見て癒されながらも、やはりこれは脅威だ。
男である小鳥遊より強力な腕力を持つ伊波に、小学一年生が対抗しうるとは。
これは成長が恐ろしい。
全世界の時間が止まればいいのに。
小鳥遊は昔からずっと考え続ける永遠の夢を再び思い描いた。

「おいお前ら、くだらんこと話してないでさっさと仕事しろ。もう休憩時間過ぎてるぞ」
「だって店長!こんなかわいい子が伊波さんと同じ腕力ですよ!?こんなかわいい子ほっとけないです!」
「小鳥遊、本音が出てるぞ」

小さいもの好きは多少のイレギュラーでは怯まないのだ。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ