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□初代様ご乱心
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死んで約四百年、縦時空軸を旅するボンゴレリングに意識を投影してからの時間でもある。
真のボンゴレリングの継承者として]世の守護者が現れたとき。
それまでは個々としてのリングだったものが、一つになった。
数世紀ぶりの友人たちは全く変わっていなかった。

「安い酒だね。こんなもので僕が満足すると思ったわけ?」

色素の薄い髪をかき上げて、飲酒により少し据わった目を鋭くした。
酒を買ってこさせたランポウは肩をびくりと揺らして小さく謝罪をもらす。

「ナックル殿、日本の酒はいかがでござるか?」

徳利とお猪口を並べた机には、雨月とナックルが隣同士で酒を酌み交わす。
いやしかし仮にも聖職者が清め以外で酒を飲むのはさすがにどうかと思うが。
米から作るのだという日本の酒は、イタリアのような大陸の酒とはまた違った風味がある。

「む、雨月・・これも酒なのか?」

濁った白い色をした酒がビンごと置かれている。
まだ封も開けられていない。
持っていたブランデーのコップを机に置いた。

「それは濁り酒でござる。G殿、一杯いかがでござるか?」

雨月たちの正面で、日本特有の酒のつまみを味見していたGにコップを差し出した。
とくとくと注がれたコップを受け取った。

「変な色だな?」

波打つ酒を眺めて、少し口に含む。
美味いのかと聞けば小さく頷いた。

「フフフ・・・G、僕にお酌してくれませんか?」

どこからともなく現れ、Gの隣に座ったスペードはほとんど空のコップを持っている。
無言で酒瓶を眼前に置くが、肩に手を回したまま。
妙な髪形の男としばしにらみ合うも、スペードは急に微笑を浮かべた。

「しかし、濁り酒・・でしたか。白濁の酒をGが飲むというのはなんとも情欲を刺激しますね」

そう言った途端ジョットの拳に炎が灯った。
が、それより早くGが後ろでつまみを作るためにあった熱々の鉄板をスペードの顔面に押し付ける。
何かが焼けるにおいと音に三人は目を逸らし、断末魔が消えるまで耳を塞いだ。
ジョットはため息をつき、隣のソファに腰を下ろした。

「ん?」

スペードを散々いじめ倒したGがいつの間にかジョットの隣に立っていた。
雨月とナックルの座る場所には、煙の上がるスペードがいた。
軽くソファが揺れ、目の前に赤い髪が揺れる。
すぐ隣に腰掛けたGは無言で酒瓶を持っていた。

「ジョット・・・」

こてん、と頭をジョットの肩に乗せ、もたれかかる。
飲酒で上気した頬と潤んだ紅い瞳で見上げられると、全身の温度が急激に上がるのを感じた。
いつものGらしくない。

「じ、G!?ど、どどどどうしたのだっ!?」

する、と腕に巻きつく感触に緊張のあまり涙目になってきた。
非常に情けないことなのだが、それほどいつものGは冷たいのだ。
腕に強く抱きついてニコニコと頬を摺り寄せる様子は猫みたいで、ジョットは持っているコップを取り落とすかと思った。

「あ、おい!G、何をっ」

持ってきていた酒瓶をジョットのコップの上で逆さまにし、ドクドクと中身を注いで行く。
ジョットはブランデーの入ったコップを持っていた。
だがGが注いだのはどう見ても日本酒。

「G・・・お前・・これ・・・」

微妙な色と香りのそれを持ったままどうすることも出来ない。
机に酒瓶をドン、と置いたGはすぐに腕に張り付いて期待の眼差しを向けてきた。
飲めというのか、これを。

「やっぱり・・・俺の酌じゃイヤなんだな・・・」

うる・・と涙を浮かばせるGに、ぎくりと肩を揺らす。
手に持った酒を見、ごくりと覚悟を決める。
そして思いっきりグラスを煽った。

「あーぁ・・・あんなの飲んだら悪酔いしてしまうでござるよ」
「仕方ないな。ジョットがGに弱いのは昔からだ」

ガクンと首を落としたジョットは、しばらくそのまま動かなくなる。
手に持ったグラスを取り、机に置いた。
一行に動かないジョットをさすがに不思議に思ったのか、Gは俯く顔を覗き込んだ。
すると、急に伸びてきた手が肩を掴み、視界が反転する。

「これはなにやら雲行きが怪しいでござる」
「馬に蹴られたくないな」
「ぼ、ボス!?」

目が据わっているジョットの様子を見るに、先ほどの一気で完全に酔いが回ったらしい。
だが、この状況においても酔っ払いというのは強いもので。
覆いかぶさるジョットの首に手を回すのを見て、ナックルと雨月はつぶれたスペードとアラウディを引きずって部屋から出ることにした。
びくびくと隅っこを歩くランポウもついでに引きずった。
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