前サイト一万HIT小説

□並盛に吹く嵐
1ページ/1ページ

「最近十代目が冷たいんだ・・・」

昼休み、綱吉は教師に呼び出しをくらい、屋上には獄寺と山本が二人。
胡坐をかいて、取り出したパンをじっと見つめたまま、獄寺はそう切り出した。
豪華な弁当を口に運ぼうとしていた山本は、口を開いたまま手を中途半端に上げた状態で止まってしまった。
冷たい?綱吉が獄寺に?そんなことがありえるのだろうか。
山本の頭にはそんな内容のことが浮かんでいた。

「ホントかぁ?気のせいとかじゃねーの?」

とりあえず箸を戻して、俯いたまま動かない獄寺に笑いかける。
だが、神妙な表情のままへらへらと笑う山本をにらみつけた。
これは重症だ、なぜならいつもならすでに殴りかかるくらいの勢いで怒鳴っているからだ。

「こないだなんか、十代目が俺の家に来たときに」

すぐに飲み物を取りに行こうと立ち上がった。
冷蔵庫を見ると、麦茶しかなくて、仕方なくコップを持って部屋に戻った。
お茶を入れて綱吉の前に出したが、綱吉は何も言ってくれなかった。
前まではニッコリ笑うとかお礼を言うとか、何かしら反応があったのに。
別に礼を言われたいわけではなくてまるで自分の存在がないようなそんな空気がどうしても

「あーストップストップ」
「んだよ」

小さめの声で息継ぎも無いくらいの勢いで話し出した。
山本にとってはその内容は別段気にするような内容じゃない。
というか、そんなことで冷たいだの不安になっているのだろうか。

「でも俺なんか役にたたねぇし、こないだなんか沸き立ったお茶を十代目の頭にぶちまけちまって・・・」
「そんなことしてたのな・・・」

わざとじゃない、躓いただけなんだ。
あの時綱吉は笑って許してくれたけど、ものすごく熱そうだった。
すぐに冷やしてそこまで酷い火傷はなかったのだけど、やっぱりあのことで怒ってるのかな。
その前の日だって十代目が死ぬ気弾で真っ裸になってしまいカバンを忘れられたとき。
カバンを届けようと十代目の家に行く途中、すっ転んで溝に落としてしまった。
それはもう中までびしょ濡れでそのときも綱吉は苦笑して許してくれたけどでもでもやっぱり

「あーもういいのな」
「なぁ!やっぱり俺は十代目に嫌われちまったんだろうか!」

確かに話を聞く限り相当なことをしている。
と、いうか、獄寺はそんなにドジっ子だったろうか。

「その前だって十代目にソフトクリームぶちまけちまったし、こないだなんか十代目の携帯をお茶の中に・・・」

ていうかわざとやってんじゃないだろうか。

「んー、まぁ、怒ってるかもっていうんなら冗談でも言って笑わせてやればいいのなー」

山本から見れば別に綱吉が怒っているとか獄寺を嫌っているとは思えない。
むしろ間逆に見えるのだが、案外当事者は分からないものなのだろうか。
いや、獄寺が先天的に鈍いのだろう。

「・・・冗談か」

ギィィ、と立て付けの悪い屋上への扉が開かれ、綱吉が来た。
獄寺は顎に手を当てたまま考え込んでいる。
山本が手を上げて挨拶するも、獄寺は何も喋らない。
珍しいな、と思いつつ次の行動を見守ることにした。

「もー獄寺君、山本と二人でなに話してたの?妬けるなー、首輪つけて躾けした方がいいのかな?」

山本はまず最初に自分の耳に何も付いていないことを確認した。
すっきりといつも通りよく聞こえる。
では自分の頭がおかしいのだろうか?
常々出来の悪い頭だと思っていたが、まさか聞こえる言葉まで曲解してしまうとは相当なヤンチャボーズな頭だ。

「ったく、俺もうちょっと勉強したほうがいいのな」

うんうんと頷いたところでいい加減現実逃避をやめることにする。
綱吉のキャラにあるまじき言葉が聞こえた。
当の獄寺を見てみると、未だに反応を返さない。
耳はいいらしいから今のが聞こえていないはずがないのだが。
冗談でも考えているんだろうか。
そう思ったとき、獄寺が顔をあげた。

「あ!十代目いたんですか?お小さいんで気付きませんでした」

途端、雷が落ちた気がした。
綱吉も笑顔のまま固まっている。
この男はどこまで嵐を呼べば気が済むのだろう。
そんな切り口?そんな切り口で笑いを誘おうというのか?
無理がある、無理すぎる、それは山本すら理解できることだった。
悪いことは言わない、今のうちに訂正しておけ、ホント悪いことは言わないから。

「ふ・・まぁ確かに?俺は獄寺君より小さいよ、ええ認めますとも、華奢で色素も薄くて受け属性の獄寺君より身長が低いよ」

目を伏せ、両手を挙げてため息をつく。
外人で言うとOh Noのポーズか。
やけに饒舌なだけで別段変わったところはないのだが、何故か恐怖を覚えた山本だった。

「でも夜の方では俺がタチだから、獄寺君を泣きながら媚びさせる自信あるか・・ぐほっ!?」
「やだなぁ十代目ってば、冗談ばっか」

獄寺の肩を掴み、あまり聞きたくない事情を喋り出す綱吉の腹にストレートが決まった。
ニッコニコの獄寺の腕だ。
右腕は綱吉の腹を殴っているが、左手はくすくすと笑う口元に重ねられている。
山本はどうしたらいいか分からず、とりあえず弁当を食べることにした。
そうだ、ここには飯を食べに来たんだ、まずは用事を済ませよう。
完全に考えることをシャットダウンしたのだった。

「じ、冗談じゃないよ・・っ、なんなら今日証明して・・・」
「そんなことより十代目、お弁当はどうしたんですか?」

はぐらかそうとしているのではない、満面の笑顔がそれを物語っている。
未だ腹を押さえたままの綱吉は持っていた弁当を見せた。
置いてあったパンを今一度手に持ち、一口食べた。
綱吉も弁当を開く。
しばらく沈黙が続き、もくもくと食べ続ける三人。
と、獄寺が何かを思いついたようにパンを置く。

「十代目、飲み物も飲まなきゃダメですよ」

ニッコリ笑ってお茶の入ったペットボトルのキャップを開けた。
綱吉が礼を言って受け取ろうとした瞬間、獄寺が綱吉の顔を固定し、口を開けさせた。
ペットボトルをそのまま突っ込み、がぼがぼとお茶を注ぎ込んでいく。
苦しそうな断末魔をあげる様子に、さすがの山本も弁当を取り落として青くなった。
なんだ?獄寺はどうしたんだ?

「ちょっ、ごぼ・・っ、む、がぼっ」
「え?なんですか?」

やっとペットボトルを放すと、お茶が飛び散り、綱吉はその場に倒れた。
山本はげほげほとせきを繰り返す綱吉の背中をさする。
もしかしてこれは山本の提案した冗談のつもりなのだろうか。
だとしたら申し訳ないことをしたなぁと思いながらも今更止めることも勇気もない山本だった。

「なんだろう・・・この気持ち、十代目が苦しんでる様子をみると胸が高鳴る・・・」

白い頬を鮮やかに色づかせ、まるで清純派乙女のような表情をする。
だが当の綱吉と山本は顔色真っ青だ。
そして二人の意見は未だかつて無いほど揃ったのだった。


新境地!?


並盛は、今日も嵐。




はい、ということで。
フリリク、『真性S獄寺とSツナの綱獄』でしたw
これだけは言わせてください。

むっちゃ楽しかった。

ていうか、十代目とごっきゅんのS対決みたいになっとるw
そしてここからドメス獄寺の芽が芽生えるのですね。
山本は苦労人になりましたw
ロビ。様、ステキで楽しいリクをありがとうございましたww
こんなダメ文でよかったのでしょうか!?@@
返品可です・・・。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ