REBORN!

□愛を込めて
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今日は隼人や綱吉たちのクラス・・いや、学校全体が文化祭という祭りなのだそうだ。
なんでもクラスごとに何か出し物的なものをするらしく、隼人はめんどくさがりながらも綱吉のために練習していたようだった。
隼人のクラスの出し物は演劇。
ロミオとジュリエットという劇だ。
綱吉曰く、劇としては古典中の古典らしい。
そしてその文化祭当日。
隼人の晴れ姿だし、適当に屋台も出るようなので、適当に見に行くかと思っていたのだが。

「お前は本当にバカだな」
「・・・うっせ」
「いや、バカは風邪引かないんだっけか?」

その当の本人がベッドで体温計を眺めていた。
39度7分という数字をたたき出し、暗に寝てろと伝えるデジタル数字にため息をついた。
隼人はずっと十代目が十代目がとぶつぶつうるさい。

「とりあえずなんか消化によさそうなもん作ってやるから」

とはいえ消化にいいもんてなんだ。
ランポウは真性のバカだし、他のやつらは風邪のウイルスを逆に駆逐しそうなやつばっかりだ。
ジョットなんて俺が知ってる限り病気なんて引いたことないしな。
まぁいいか、適当に作ろう。
こないだ一緒に食べたうどんとやらでいいか。

「お、おいG・・それよりも文化祭・・・」
「あ?休めアホ。声も碌に出ねぇくせに」
「んなわけにいくか・・・」

隼人が言うには、クラスの演劇はロミオとジュリエット。
このロミオという男とジュリエットという女は敵対勢力の息子と娘で、許されない恋に落ちたと。
その二人が結ばれるためにはもはやあの世にいくしかないと。
だが本当に死んでしまっては身も蓋もないから、仮死状態になる薬を作るように仕向ける。
なんやかやあって、お互いがお互いを死んだと思い込み、結局自害。
周囲はそんな二人を見て自責の念にとらわれるというありがちな悲劇だ。

「お前・・その解釈はさすがに不謹慎だろ」

間違ってないだろ。
要所を取り上げたまでだ。

「それでそのロミオ役を任されちまったと」

当日に主役が降板じゃぁ中止せざるを得んわな。
どうせ綱吉に頼まれたとか、綱吉の「いいんじゃない?」とかの安易な一言でやる気になったんだろ。
とはいえ風邪引いちまったもんはどうしようもねぇ。

「ぢぐじょー」
「綱吉には連絡入れてやっから」
「うう・・・すいません十代目」

隼人の携帯で学校に電話をかける。
電話のかけ方は最近隼人に教えてもらった。
だが俺は気を利かせて連絡を入れることを早速後悔することになる。
数回のコールのあと、涼しげな女性の声が聞こえた。

『はい、並盛中学校です』
「ああどうも、一年の獄寺隼人の保護者の者ですが」
『あら、おはようございます。沢田君ですか?少々お待ちください』

別に連絡を伝えてくれるだけでよかったのだが、なぜだか綱吉を呼びにいった。
待機中らしい機械音楽が聞こえる。

「おいこら、誰が誰の保護者だ」
「違ったか?」
「ったりめぇだ!・・っげほ、つかお前、敬語なんて使えたのかよ」
「おいおいバカにしてんのか?何歳だと思ってんだ」
「・・・百歳」

死んでからも勘定に入れるならあながち間違ってないかもしれない。
何歳で死んだかなんていちいち覚えちゃいねぇが。
そんな会話をしていたら、受話器越しに少年の声が聞こえた。

『もしもし』

このもしもしってのはハローてきな意味なのか?

「よう、綱吉」
『おはようございます。獄寺君、風邪ですか?』
「ああ、よく分かったな」

少々心配そうな色が含まれているが、なんとなくで分かっていたようだ。
あいかわらず大空の連中は厄介というか鬱陶しいというか。
サイキッカーか?
最近では実は宇宙人でしたと言われても驚かないだろうとまで思い始めた。

『なんとなくGさんが電話してきそうな気がしていたので・・・』

やっぱり宇宙人だな。

「そーだ、風邪だ」
『大丈夫なんですか?』

ちらりと隼人を見れば握りこぶしを作って大丈夫アピールしている。
十代目に心配をかけさせるな、と目力で訴えてくる。

「けっこう重症だ」

あからさまに隼人がショックな顔をした。
面白いやつだ。

『あはは、Gさんは天邪鬼ですね』

本当に心を読まれているようで気持ち悪い。
これも全部ジョットのせいだ。
今度土産にショートケーキを持っていってやろう。
どちらかといえば甘党のあいつに、タバスコで味付けしたたっぷり果汁(唐辛子の)の染みたケーキを。
まぁただの八つ当たりだが。

「そーいうこった、まぁ残念だったな」
『あ、待ってください』

少し慌てたような声。
状況が目に浮かぶようだ。

『Gさんに来てもらってもいいですか?』

は?

『だって、意思だから獄寺君になれるじゃないですか。みんな今まで一生懸命練習してきたし、中止じゃかわいそうでしょう?』
「知るか」
『お願いします、今度なんでも言うこと聞きますから(ジョットさんが)』

もう一度お願いします、と泣きそうな声で言ってくる。
どうせ演技とは分かっているのだが。
薄々感づいていたが、俺は強く頼まれると断れない性質らしい。
それになんだかんだ言って我が親愛なるボスにそっくりなこいつをちょっと可愛いと思ってる俺がいる。
ので、残念ながら俺の返答はこうだった。

「・・・分かったよ」
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