REBORN!

□祭囃子
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蒸し暑い。
この気温はありえない。
タバコが吸いたいがために実体化してきたというのに、この暑さは尋常じゃない。
壁にかかった温度計を見ると、39度という生前見たことのない気温になっている。

ジャッポーネ、恐るべし。

Gは意外と広くて快適な獄寺の部屋にあるソファに座り、天井を見上げていた。
暑くて長袖なんて着ていられない。
しかも獄寺がいないからクーラーのリモコンがどこにあるのかも分からない。

「隼人がいないときに来るのはやめるか・・・」

当人がいないのにクーラーを付けて電気代とやらを増やすのもかわいそうだ。
袖をまくりあげ、前のボタンは全部外す。
それでも暑い。
そんなに暑さに弱かった覚えはないのだが、これはさすがに参ってしまう。

(なんか飲み物ねーかな・・・)

冷蔵庫を開けると、生活感のない中身は『十代目用、のむな』という紙が貼られたコーラのペットボトル。
水道水をボトルに移して冷やしているものが多数。

(相変わらずだな隼人は・・・)

大抵のことはなんなくこなす獄寺は、家事だけは全く出来ない。
冷蔵庫を閉じ、キッチンの棚を開けると、コーヒーの豆を発見。
火くらいは多少使ってもいいだろ。
やかんに水を入れて火をつけた。

「・・・あつ・・・・」

火をつけた影響でキッチンが異常な温度。
ホットじゃなくてアイスコーヒーにしようと思い立ったGは、適当な量のコーヒーを入れ、そのまま風呂場に向かった。
覚めるまでシャワーでも浴びるか。
来ていた服を脱ぐと、べたべたしていて気持ち悪い。
水風呂はあんまり好きじゃないからちょっと温めに湯にでも浸かるか。
すっかり我が家である。

「ん・・・?」

汗を流し終えて、半分ほど湯を張った浴槽で鼻唄を歌っていると、遠くのほうで祭囃子が聞こえる。
ああ、そういえば隼人が夏祭りとかいうのがあると言っていたな。
子供たちの笑い声や太鼓の音は愉快そうだ。
なんでも学校が主催の夏祭りらしく、校庭に出店が出されて学校の部活動なども参加するらしい。
そういえば吹奏楽部の演奏が聞こえる。

(そういや夏祭りってどんなだ?)

日本にあまり興味のなかったGは日本行事に疎い。
その点ジョットは詳しいのだが。

「・・・見てみたいな」

ボソ、とつぶやき、思い立ったが吉日だ、と考えて浴槽から上がった。
足元に水をかけてから脱衣所に出た。
タオルで身体を拭いて、髪を乾かしながら気付く。

(あ、服ねぇや)

自分は基本リングの意思なわけだから、来ていた服以外服など持っていない。
どうしようとか考えてるうちに、また少し汗ばんでくる。
さっさと風呂の熱気漂う脱衣所を出たい。
ぐる、と見渡すと、見覚えのないものがあった。

(・・・これでいいか)

着方が分からないので羽織って一緒にあった紐を手に脱衣所を出た。
水で冷やしたタオルを肩にかけてリビングへ入ると、いるはずのないやつがいた。

「ん?おお、あがったかG」

金髪のそいつは、Gが入れたコーヒーをストローで飲みながらソファに座っている。
しかも悠々とクーラーをつけてテレビまでつけて。
服もいつもとは違う。

「何してんだ」
「迎えに来たぞ」
「は?」

コップを机に置いて立ち上がり、持っていた変わった紐をGから奪い取った。
薄赤色のそれを腰に巻き、後ろできゅっと縛った。
そういえばこの服は昔ジョットに見せられた日本の着物によく似ている。
彼岸花のような模様があしらわれた黒の着物に薄い赤の帯。
ジョットのものは色違いだ。

「うん、よく似合うぞ」

そして小さな袋を持たされる。
ジョットも持っているそれの中身は財布だった。

「お、おいなんだよこれ」
「知らんのか?今日は祭りだ。祭りといえば浴衣だ」

暑いだろう、髪も結っていけ。
そう言ってジョットは勝手にGの赤い髪を結んだ。
玄関まで引っ張られれば、よく分からない履物があった。

「ここに親指を入れるんだ」

どうやら草履とかいうあれらしい。
歩きにくいことこの上ないが、丁度祭りに行こうと思っていたのだ。
逆らったら面倒だし、甘んじてついていくことにした。
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