REBORN!

□好きなんかじゃない
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「ありえない、ありえないよ」

バン!と勢いよく扉を開いて入ってきたアラウディはいきなりそう言って嘆いた。
そしてその勢いで出来た風に書類が飛ばされてGは青筋を浮かべる。

「何が」

書類を拾い上げ、またペンを手に取ったGはアラウディに視線をよこさずにそう聞いた。
完全に無関心でどうでもいい、感情のこもらない声色だったが、アラウディはどうでもいいようだ。
Gの机に両手を叩きつけて喋りだした。

「ついさっきスペードに告ったんだけどさ」
「は?」

真剣な顔で予想外のことを言い出すアラウディに思わず間抜けな声が出る。
スペードというのはアレだろうか、頭でパイナップルを栽培してるアレだろうか。
え、好きだったの?
というかそれ以前にこいつら殺し合いしてなかったっけ。
Gはそんな疑問に首を傾げた。

「好きだったんだよ」

心でも読んだのか、アラウディは訝しげな表情をした。
ペンを置いてタバコに手を伸ばし、火をつけた。

「・・・フラれたのか」

顔を背けたのは別にアラウディを気遣ったわけでも嘆いたわけでもない。
スペードに告白して無残にフラれるアラウディを想像して笑いそうになったからだ。
他の連中ならもっと真剣に考えたかもしれない。
だがよりにもよってスペードとアラウディというビジュアルにウケたのだ。

「君ってホント、僕に対してすごく失礼だよね?」

まぁ隠し通せるものとも思っていなかったが、察するものがあったらしい。
そもそも告白なんて乙女なことをこの男がするなんて誰も想像し得ないだろう。

「なんて言って告白したんだ?」
「僕に毎朝アサリ以外のミソシルを作ってって言った」

なんでアサリはダメなんだとか、なぜあえてそのセリフなのかとか、色々聞きたいことはあった。
でもなんとなく察することは出来た。
Gは少し考えるそぶりを見せたあと、こう尋ねた。

「もしかして雨月に相談した?」
「うん」

また楽しいことをしたものだ。
孤高の浮雲と謳われ、誰にも頼らず一人で物事を解決してしまうこの男が。
よりにもよって物腰柔らかな雨月にものを聞きに行ったのか。
いや、どうせ自分からではなく偶然隣にいた雨月につい愚痴ったとかそんな程度だろう。
誰にでも物言わぬ地蔵に何か喋りたくなるときがあるのかもしれない。

「それで、なんで俺にそのことを報告しにきたんだ?」

正直なところ、アラウディがスペードにフラれようとどうなろうと、Gは全く興味がない。
男同士だろうがなんだろうが、本人がいいならそれでいい。
基本的には事なかれ主義なのだ。

「ああ、そのこと」

机から手を離したアラウディは、Gの腕を掴んで無理矢理立ち上がらせた。
仕事中だったGは訝しげに見るが、そんなことを気にする男じゃない。
そのまま部屋に設置されたソファに座らせ、自分も隣に座った。

「・・・まぁ、本来なら君にこんな話、しようとも思わないんだけど」
「俺も聞こうとも思わねぇな、現在進行形で」

Gは自分の右手首に繋がれる手錠と、それを繋ぐアラウディの左手首をイライラと眺めた。
拒否権は最初から与える気すらなかったらしい。
というか逃げようとも思っていないが、さすがに繋がれるとむかつく。
まぁアラウディがこうして人に話を聞いてもらおう(そんな殊勝なものではないが)という姿勢になったのはいいことだ。
昔は取り付く島もなかったのだから。

「それで、なんていってフラれたんだ?」
「ホントに信じられないよ、この僕がわざわざあんなパイナップルに好意を伝えたのに」

よっぽどなことを言われたのだろうか。
ある意味興味がある。
Gは腕を組んで怒りを露にするアラウディを覗き込んだ。

「僕が『どうせこの世に君のようなありえないセンスを持つ変態バカを愛してくれる人間など存在しないだろうから僕が愛してあげるよ』って言ったら」
「ストップ」

相変わらず冷たい瞳をGに向け、アラウディは足を組んだ。

「え?お前妥協してスペードを好きになったのか?」
「熱烈に愛してるよ。あの不可解極まりない頭のセンスも全てね」

ああ、こいつはそういう感じなのか・・・。

「話、続けろ」

あまり深く考えないことにした。
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