REBORN!
□懐かしい記憶
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「そういえばあれは、何百年前のことだったか・・・」
ジョットは遠い目をしながらコーヒーカップを傾けた。
少し冷めて味気の無いコーヒーだが、窓から差し込める日差しはそんなことを忘れさせてくれる。
窓の外にはすずめたちが囀り、たまに人や猫が通り過ぎていく。
「あの日も、こんな風に暖かい日和だった」
「悦に入ってるところ悪いんですけど、急に話を始めないでもらえます?」
シャーペンを握り、机に置いた課題に向き合う綱吉はそう突っ込んだ。
窓枠に座って派手なカッコでコーヒーを飲むジョットは自らの来孫を見る。
「そろそろかと思ってな」
無駄に作りのいい顔でふ、と微笑む。
金髪が光り、幻想的ではあるが言ってることは綱吉には理解が出来ない。
そもそも最初は綱吉が学校の宿題をやっていたのだ。
ジョットはその隣でコーヒーをのんびり飲んでいた。
それがいきなり立ち上がり、窓際に座ったかと思うと急に冒頭のセリフだ。
「・・・何がですか」
すごく聞いてほしそうな顔で見つめてくるので、綱吉は目を逸らしながら小さく尋ねてみる。
その瞬間異様に嬉しそうに顔を歪ませた。
「俺は自分で言うのもなんだが、超天才児だった」
「自分で言わないでください」
青筋を浮かべながら参考書をパラパラとめくる。
なんなんだ、自分へのあてつけなのか、綱吉はそう思って握るシャープペンシルをミシミシと言わせた。
空になったカップを机の上に置き、また黄昏る。
「その影響か、俺は周囲の子供たちには脅威に移っていたのだろう」
少し寂しそうな顔で空を見上げる姿に、もしかしたら一人ぼっちだったのだろうかと考える。
少し前の自分のように、誰とも交われなかったのだろうか。
「靴がボロボロに切られて池に放り投げられていたり、カバンの中から財布が消えたりと色んなことが起こった・・・」
「いじめられてんじゃないですか!」
俺の同情を返せ、そう叫んで消しゴムをジョットの後頭部にヒットさせる。
が、実体のない頭をすり抜け、壁にぶつかる音が響いた。
ダメツナと呼ばれていた綱吉だが、この短い期間に物を狙った場所に投げられるようになったらしい。
ジョットは、綱吉の苛立ちなど気にも留めずに昔を振り返る。
「いつものように、同級の子供たちに落とし穴に落とされ、そのまま生き埋めにされそうになっていた」
「それはまたすさまじ・・・今いつものようにって言いました?」
マントをふわりとはためかせながら窓から降り、代わりにベッドに腰を下ろした。