REBORN!

□とある二人の日常
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"男は絶対に抱かれたくないと言っている女を抱くときが一番興奮する"
この液晶に移っている男が言うことを要約すればこういうことらしい。
室内にいながらまるでそこにいるように動く映像。
これが今や日本全国どこの家でも見られるというのだから驚きだ。
一般的にバラエティと呼ばれているジャンルのこの番組は、外国育ちで過去の人間であるGには特別に面白いとも思わなかった。
なんとなく眺めているだけではあるが、ほんの少しだけ興味が沸いた。

プツン

お笑いに拍車のかかったテレビを消すと、それとほぼ同時に眩しい男が現れた。
Gの座っていたソファに後ろからもたれかかり、Gの白い首筋を指先でなぞった。

「何を見ていたんだ?」

Gは性行為が好きだ。
気持ちいいし、生きるものなら嫌いなやつはいないだろう。
生きている限り性欲はあってしかるべしなのだ。
ゆえに、この男からの誘いを断ったこともない。

「別に」

日本の夏にはさすがの能面男も参っているらしく、珍しい格好をしている。
シャツの袖はまくられているし、そもそも上着とマントを着用していないなんて、現在に実体化して初めてのことだ。
なんのこだわりがあるのか知らんが、ジョットはいつだって暑苦しい格好だった。

「この暑い中、綱吉たちは学校だそうだ。もうすぐ期末試験とやらがあるらしい」
「日本は学力教育だからな」

言いながら勝手に冷蔵庫を開けて麦茶をコップに注いだ。

「人のことは言えんが、お前にしては珍しくラフな格好だな?」

ご丁寧にGの分も入れて隣に座った。
ノースリーブと短パンは勝手に獄寺のものを拝借している。
この熱いのにジョットのような服装はあまりにもバカすぎる。

「暑いおかげでなにもする気にならん」
「そりゃ世界も平和で万歳だろうな」

気温のせいか、軽い嫌味にも敏感に反応するらしい。
ジョットがGの肩を掴んだ。

「確かに暑いが、やる気になることもあるんだぞ?」
「俺は全くやる気が起きねぇ。どうせなら海水浴にでも行きてーな」

薄いシャツを指に引っ掛けるジョットにチョップをくれてやりながら生暖かい空気が流れてくる窓を眺めた。
大量に汗を流すコップを持てば、冷たい感触になんとなく涼しくなったような。
麦茶を一口飲んで、大人しくなったジョットに目を向けた。

「・・・水着は持っているのか」
「は?」

ぼそりと呟かれた言葉に思わず気の抜けた声が漏れた。

「海に行きたいのだろう。つれていってやる」

どこがいい?
まさかなんとなく口から出たことを本気にするとは思っていなかった。
だが、海か。
温暖化の影響でクラゲが多いとか、紫外線が強いだとかいい話は聞かないが。
それでも涼しげな響きにGの心も揺れた。

「今週は無理だが、今月末になれば綱吉たちも長期休暇に入る。そのときにみんなを誘って行こう」

コップの麦茶を一気飲みしたジョットは、完全にくつろぎモードに入った。
人様の家でえらそうなことだ。

「G、腹が減った」

そう言われると立ち上がって食事の準備を始めてしまうのはもう習性だろうか。
何もしてなくても暑いし、どうせなら家事でもして汗かいてから風呂にでも入ろうか。
そのほうがさっぱりするだろう。
そんなことを考えながらGは冷蔵庫の扉を開けた。
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