REBORN!

□サン・バレンティーノの日
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ジョット→上流階級の子。今の日本の一戸建てくらいの大きさの家に住んでいると思ってください。二階建て。
寝巻きって言っちゃってるけど寝るときは裸ですごめんちゃい。
G→家無き子



雨は憂鬱だ。
ジョットは、ザァザァと音を立てる暗い外を眺めながら頬杖を突いていた。
冷え切り、湿った空気。
うっすらと見える水滴が落ちてくる線。
少し手を伸ばしただけで、手には強く水が打ち付けてくる。

「・・・はぁ」

14になったジョットは、今日という日が何の日なのかを考えてため息をついた。
2月14日。
そう、世間的にはサン・バレンティーノ。
愛し合う者同士がお互いにプレゼントを交換する日だ。

ザアアァァァァ・・・。

寝なさいと言われて部屋に入ったはいいが、机の上には渡す相手のいないプレゼントがぽつり。
いや、いないわけではない。
いるのだが、この場にはいないのだ。

「くそ・・なぜ今日に限って」

今日というこの日に限って、両親が観劇を見に行くと言い出したのだ。
もちろんジョットは留守番をすると言った。
だが、こう言ってはなんだが、ジョットは身の回りのことに疎かった。
心配だと言って残ることを許してくれなかったのだ。
今日この日を共に過ごしたかった相手は、貧民の子供だ。
一緒にいたいなどと言ったら、頭の固い親が何を言うか、分かりきっている。

「今どこにいるのだ・・・」

もう少しで今日が終わってしまう。
かれこれ一週間は会っていない。
家のない彼は、この雨の中、その小さな身体を震わせているかもしれない。
そう思うと、ぬくぬくと布団で眠る気には到底なれなかった。

「寒いな・・・」

やはり探しに行こう。
リビングにはまだ両親がバレンティーノを堪能している。
だが、親が堪能して子が堪能してはいけないなんてことはないはずだ。
玄関は見つかる恐れがあるので、音を立てないように窓をそっと開けた。
コートを着て、タオルと毛布、そしてもう一着のコート。
さらに綺麗に包装されたプレゼントを持ち、窓に足をかけた。

「よし・・・、いでっ!」

今まさに雨の中へ飛び出そうとした、その時。
額に痛みが走り、手で押さえた。
カンカンと音を立てながら下へ落ちていく小さな石を目で追うと、誰も居ない通りに人影があった。

「じ、G!」

うっすらと見える見慣れたイレズミ。
今日一日、ずっと共に過ごしたいと思っていた人物だった。
この寒いなか、薄いカッターシャツにズボンという格好のGは全身びしょぬれになりながら立っていた。
Gはゴミ箱から屋根の上に飛び乗り、身軽にジョットの目の前まで来た。

「バカ、鈍くさいくせに何しようとしてんだ」
「だ、だって・・Gが寒がっているのではと思うと・・・とてもじっとなどしていられない」

びしょぬれなGを見て持っていたものを全部取り落としていた。
すぐに床からタオルを拾い上げて、Gの頭にかぶせた。

「風邪を引くぞ・・中に入れ」

されるがまま、頭を拭かれるGを引っ張る。
だが、両腕で身体を抱きしめるようにしたまま動かない。
ひょっとして寒いのだろうか?

「ホントにバカだな。お前の部屋が濡れちまうだろ」
「何を言っている。濡れたら拭けばいいだけだ。意地を張っていないでさっさと入らないか」

ぐだぐだと言って中に入ろうとしないGを無理矢理引っ張りこむと、Gが窓枠に足を取られて倒れこんできた。
情けなくも支えることの出来なかったジョットは、部屋の中に一緒に倒れこんだ。
どすんと派手な音がして、階下の両親の不信そうな声が聞こえる。
二人は目を見合わせてやばいと囁き合い、ジョットは慌ててGを布団に押し込んだ。

「ジョット?どうしたの?まだ起きてるの?」
「な、なんでもない。ちょっと足を滑らせただけ・・・」
「そう、気をつけてね。それと夜更かししちゃだめよ」

小さなノックの音が止まり、階段を下りる音がする。
ふー、と息を吐き、布団をぴらりとめくった。

「G、とにかくその濡れた服を脱げ。本当に風邪を引くぞ」
「・・・お前と一緒にすんな。平気だ」

未だに腕を組んだまま離さない様子に呆れるが、何はともあれ、これで望み通り今日を楽しむことが出来る。
床に落ちてしまったプレゼントを掴み、Gに手渡した。
意表をつかれたような顔をしたあと、腕を片方伸ばして受け取った。
小さなその箱は、軽く振ってみたが音がしなかった。

「本当は服とか選びたかったんだが、お前のことだ。どうせ受け取ろうとしないだろう?だから小さいものだが」

確かに、Gは上流階級の金で解決するような、そんなやり方は嫌いだったし、服なんて最低限あればいい。
ジョットのようにたくさんあっても邪魔なだけだ。
以前にそういう話をしたことがあった。
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