めだかボックス

□・・・楽しそうだな
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『おいしー!』

細長いスプーンを口に運びながら、幼い顔を綻ばせる。
球磨川は過負荷のリーダーであっても、基本的には人懐っこく明るいやつだ。
いくつもの層が重なるイチゴパフェに目を輝かせる様子はとても最上級生には見えない。

『善吉ちゃん、これ全部食べていいの?』

大きな瞳を輝かせながら、四分の一に切り分けられたイチゴをぱくりと食べた。
そしてまた幸せそうな笑顔。
ああもう、可愛いなチクショウ。

「特別に割り勘にしてやるよ」

いつもの学ランではなく、フードのついた袖の短い服を着ている。
相変わらず色は黒だが、ぱっと見男女の区別がつかない。
もともと細身だし、だぼっとした服に細い足が伸びている。
こいつもGパン履くのかとちょっと意外だった。

『不知火ちゃんに感謝だねー』

そういえば何故俺と球磨川が一緒にこ洒落た喫茶店でパフェをつついているのか。
それは一言で言えば不知火の余計なお世話だ。
今日はあたし一緒に帰ってあげられないから代わりに人吉と一緒に帰ってあげて☆
と、これは球磨川から聞いた不知火の台詞だ。
暖かいコーヒーを飲みながら、目の前の球磨川を眺める。

『見て見て善吉ちゃん!これって何かな・・ラズベリー?』

不幸を糧に生きてきた球磨川がこんなに幸せそうに笑うのは、あの戦挙があったからこそだろうか。
それとも、昔からこんな風に笑うやつだったのか。
だとしたら俺は随分と惜しいことをした気がする。

「・・・楽しそうだな」
『うん!だって僕パフェ食べたの初めてだもん!』

薄い桃色の生クリームを口に運ぶ。
赤い舌が唇についた白いクリームを拭い取った。
・・・あ、むらっときた。
いやいやいやなんでだよ、なんだよむらって。

『善吉ちゃん!』
「あ?」

球磨川を見つめたまま頭を抱えていた俺に、細い腕が伸びている。
その先には綺麗な手が細いスプーンを持っていて、そこにはチョコレートらしき物体が乗っていて・・・。

『さっきから見てたでしょ?食べたいのかなぁって思って』

にっこり。

『どうしたの?』

さ、サタン可愛い!
その首を傾げる仕草は狙ってるのか?

『善吉ちゃん、溶けちゃうよ。ほらほら、あーん』

いや、バカにされている。
自棄になってガリ、と歯を立てながら食べた。
まぁ確かに美味い。

『善吉ちゃんは僕のはい、あーんが嬉しかったのかなぁ?そんなにがっついちゃって。ほら、口に付いてるよ?』
「うるせぇ!」

舌でぺろ、と舐める。

『そこじゃないよ、もっとこっち・・・あーもう、これでふきなよ』

テーブルに置かれていた白いナプキンを一枚取り、差し出してきた。
確かに嘗め回すよりいい。
しぶしぶと口元をぬぐった。
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