こそっとコラボ

□ワグナリアの秘密2
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「お待たせしました、相馬さん」

小鳥遊がパイプ椅子に座る相馬と臨也に料理を置いた。
湯気の立つ炒飯とハンバーグ。
これがあの佐藤が作った料理だと思うと、胸の奥が熱くなるような気がした。
昔、ここで同じようにキッチンでバイトしていた頃は、あまり食べられなかったから。

「ありがとう、小鳥遊くん」

いただきます、と手を合わせて、美味しそうな香りを立てる炒飯を口に運んだ。
臨也もデミグラスソースのかかったハンバーグを子供用のナイフとフォークを使って一口サイズに切った。
いかにもお子様ランチ、というような形に盛られたチャーハンや、子供の好むたこさんウィンナー。
子供らしくないこの子は、あまり料理に頓着しない。
だが、黙って次々と口に運ぶ様子を見る限りでは美味しいと感じているらしい。

「臨也、美味しい?」
「うん」

口元を汚すことすらしない、全くかわいくない子供。
だが、彼女の料理を美味しいと言ってくれる子。

「お父さんはあの人のことが好きなの?」

にっこりと笑って爆撃を投下していった。
まだ部屋にいた小鳥遊も含め、相馬も固まった。
あの人というのは十中八九佐藤のことだろう。

「お母さんと別れたのもあの人のことが忘れられなかったから?確か佐藤さんだっけ?ああ別に気にしなくていいよ。俺は別にお母さんのことはなんとも思ってないから。あの人俺のこと疎んでたし。どちらかといえばお父さんの方が好きだよ。まぁあくまでどちらかといえばだけどね」

小学一年生の割りに随分と自分の置かれた状況を理解している。
最初に会ったときから思っていたが、臨也はかなり特殊な子だ。
小鳥遊もそれに気付いたのだろう、引きつった表情をしている。

「・・・相馬さん、子供になんてこと教えてるんですか!」

ミニコンである小鳥遊は青筋を浮かべている。
小学生で小柄な臨也は完全にストライクゾーンらしい。
だが勘違いしないでほしい。
これは相馬が教えたことではない。
臨也が自分で勝手に理解したのだ。

「話せば長くなるんだけどね・・・」

小鳥遊は休憩中なのか、それとも表が暇なのか。
話を聞く体勢に入った。
お茶を入れて、臨也にはジュースを。

「・・・臨也くんの前ですし、お手柔らかに」

スプーンを置いて、湯気の立つお茶をずずず、と飲んだ。

「まず、ワグナリアのバイトを止めたのは、佐藤さんのためなんだ」
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