こそっとコラボ

□ワグナリアの秘密
1ページ/6ページ

昼下がり、日曜日のワグナリア。
北海道民ならある程度は知っている少し有名なファミレス。
そこには個性豊かな従業員が日々接客業務に勤しんでいた。
そしてそのワグナリアには、今日もいつもと違う光景が展開されている。

「か、かんわいいぃぃぃ!」

小鳥遊宗太というフロアの従業員は今、休憩室から一歩も出ようとしない。
その理由は、一言で言えば佐藤にあった。
より正確に言えば、佐藤の連れてきた人物にあった。

「きれーな髪だね!」

その人物の頭を撫でる種島は、今年成人を迎えたが、相変わらず身長は伸びなかった。
自分と少ししか変わらない身長を持っている種島に撫でられるのはそう嬉しくもないのだろうか?
ずっと仏頂面を変えていない。
小鳥遊はそんな光景を恍惚の表情で見つめた。

「佐藤さん!この子は誰ですか!?」

小さな少女のいる休憩室では、佐藤も流石にタバコは控えるらしい。
手持ち無沙汰に種島の髪を弄っている。

「ちゃんと自己紹介しろ」

子供に向かってそう言ったきり種島に意識を戻してしまった。
茶髪で愛らしい顔をした少女は休憩室に集まっている小鳥遊、種島、杏子に向かって頭を下げた。

「しずおです。はじめまして」

鈴のなるような声で挨拶した静緒に、杏子だけが手を上げて久しぶり、と言った。
子供好きの小鳥遊はもちろん、種島も静緒を抱きしめてかわいい!と叫ぶ。
その光景に悶えながらも小鳥遊は当初の質問を繰り返した。

「親戚の子ですか?佐藤さんこんなかわいい子知ってたんなら早く連れてきてくれればよかったのに!」

静緒と種島の頭を撫でながら佐藤に向かって咎めるように叫んだ。

「いや、来るのはしょっちゅう来てたぞ。五年前からな」

杏子の凛とした声が響き、小鳥遊は驚きの声を上げた。
種島も小さな身体をいっぱいに使って驚きを表現した。

「ええ!私も知らなかったよ杏子さん!」
「どうして教えてくれなかったんですか!」

五年前ってことはまだ乳児でさらに可愛かったはずなのに。
小鳥遊は自分が世話を出来なかったことを口惜しく思って地面を何度も殴った。
チュッパチャ●プスを口から出した杏子がいつもと変わらぬ様子で言った。

「営業の邪魔になるだろ、こんな風に相手しまくって。特に小鳥遊が使い物にならなくなる」
「確かに・・・」

以前にも迷子の子供が来たときは小鳥遊が接客を放棄していた。
その場をごまかすように小鳥遊が叫ぶ。

「いや、それよりも根本的な質問に答えてないですよ!」

叫びながらも静緒を撫でる手を止めないのは本能だろうか。

「一体誰なんですかこの子は!」
「俺の娘」
「ああ、なんだ佐藤さんの娘さん・・・え?」

もう聞きなれた小鳥遊と種島の叫び声が、ワグナリアに響いた。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ