デュラララ!!
□駅のホーム
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夜遅くの駅のホーム。
赤いファーのついた黒地のジャケットを右手にかけて、機嫌良さそうに歩く青年が一人。
誰もいないホームは静かで、青年の歩く音だけが響く。
首筋にかかれた"NEBURA"の刻印が髪の隙間から覗いている。
(あーあー、津軽とサイケは相変わらず仲良しこよしだし、一人ぼっちで寂しがってたデリックにも変な王子様が来ちゃったし)
外見のご機嫌とは裏腹に、内心では戯れる相手がいないことに少し退屈を感じていた。
パソコン内のプログラムのようなそいつらは、普通とは違い、自我と感情を持ったプログラムだ。
その中でもサイケとデリックはこの現実世界にも出てこれる。
所謂アバターのような彼らは、青年のマスターである折原臨也という情報屋の周囲にいる人間がモデルになっている。
どいつもこいつも一般人とは遠い連中だ。
中には学生も混ざっているというのに、おそらく碌な大人にならないだろう。
(ダイヤはルージュとべたべた・・・学天、リンダ、杏かけもツパチンも所詮プログラム)
主である折原臨也の影でもある青年は、名前を持たない。
新宿を主体とする臨也は、あまり遠くへは行きたがらない。
人が多い場所を離れたくないからだ。
だからこそ、情報屋として全国の情報を集めるために、代わりに遠くまで足を運ぶ彼が生まれた。
(俺は臨也がモデルではあるけど、人が好きなわけじゃない)
三月という時期もあって、駅には冷たい空気が流れている。
「月島」と駅の名の刻まれた丸い柱にもたれかかった。
(だから情報屋は全然楽しくない。これこそクソったれだ)
臨也がよくクソったれと証する情報屋という職業は、彼にとってのほうがよっぽどクソったれだ。
終電はとっくに終わっている。
クソったれな臨也のフリをして、クソったれな仕事をこなしたあとに寒い駅に一人だけ。
(やーってらんないや)
冷たい風も、人ではない彼にはただただテンションだけを下げるだけだった。
「せめて俺がもの食べられたらなぁ・・・」
月島の名物であるもんじゃ焼きをおいしくいただけたというのに。
誰も居ないところで独り言を言った。
つもりだった。
「もんじゃ、おいしいもんな」
すぐ左隣から聞こえた声に、青年は目を見開いた。
驚いて隣を見れば、先ほどまでは存在しなかった男がそこにいた。
赤い目を丸くして金髪の男の横顔をじっと見ていると、こちらを振り返った。
するともっと驚くことになった。
(平和島、静雄・・・?)
白いマフラーに白いカバン、そしてバーテン服。
なぜか口に銜えた切符と地図らしき白い紙。
じっと見つめていたら、静雄がこちらを向いた。