デュラララ!!

□拗ねたときは
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津軽が折原家にやってきて随分経った。
静雄本人よりも背が高い(臨也情報)津軽を波江が見たときは真意を知りたくない視線を向けられた。
だがまぁ、いつも何かしら騒いでいたサイケの子守りもしてくれるし、結果的にはいい拾い物をした。

「津軽、新しいレシピいれようか」

演歌歌手のように青と白の着物を着た津軽は台所に立つと異様によく似合った。
歌や人格設定以外空っぽだった津軽は意外と簡単にレシピをダウンロードできた。
料理ゲームのソフトを繋ぐだけで勝手にダウンロードしてくれたのだ。
今日は家庭料理でもと思ってその辺のサイトからレシピを印刷してきた。

「マスター、出すぎたことを言うようですが」

その紙を受け取って、目を通す。
瞳のモニターからデータ化してるんだとか言っていた。

「何かな?」
「もっと野菜を食べるべきです。マスターからいただいたレシピは栄養が偏っています」

栄養バランス考えるのめんどくさいからデータを入れておいたんだった。

「はぁ〜、なんで野菜ジュースじゃ栄養は賄えないのかな・・・」

津軽の真摯な訴えにしぶしぶ野菜炒めなどのレシピを検索する。
仕事は波江、家事は津軽と全部振り分けて臨也のやることはほとんどないのだが、少し口うるさいのが多い。
その辺は静雄に似ている。

「シズちゃんも貧乏性だから買い弁の俺に文句ばっかり言ってたっけなー」
「マスター、ニヤニヤしてるの気持ち悪いよー」

波江からの差し入れのカステラを食べながら寝転ぶサイケにボールペンを投げつけた。
額にヒットした。
痛がるサイケに津軽が駆け寄ってギャーギャー騒ぐのをなだめる。
もう見慣れた日常だ。

「マスター、つかぬ事を伺うが、しずちゃんとはなんだ?」

津軽の膝枕にうつぶせながらまたカステラを食べだしたサイケ、の額を撫でる津軽が聞いてきた。
そういえば静雄に会わせたことはないのだった。
ちなみにサイケは静雄に会ったことがある。

「マスターはよくその名を言う。しずちゃんとは猫か?」
「なんで猫なの」

とか言いつつ脳裏に猫耳をつけた静雄が浮かぶあたり自分は痛いと思う。
ぶっちゃけ自分がかなりアレなことは自覚している。
自覚ありとなしじゃ180度違う。

「シズちゃんはねー、臨也くんの好きな人のことだよ。これ写真」

ポケットから出てきた写真にちらっと見えたのは、缶コーヒーを飲む静雄の姿。
ガタっとイスを倒しながら立ち上がった臨也が周囲の机の引き出しを片っ端から開ける。

「サイケ!お前いつの間に・・・!」
「マスターこんなの持ち歩いてんだよー」

金髪にバーテン服、サングラスをかけた人物の移る写真をじっと見つめる。
よく似ている。
そういえば、津軽は自分のモデルになった静雄の存在は知っているのだろうか。
おそらく静雄の方は津軽の存在など露ほども知らないだろうが。

「津軽にそっくりだよねー」
「・・・」

膝の上に寝転ぶサイケをソファに座らせ、臨也の隣まで歩いてくる。

「しずちゃんのこと、もっと教えてくれ」

臨也はそれを聞いて驚いた。
津軽はサイケよりもずっと旧式だ。
身体は機械、肌の柔らかさは再現してあるが、体温はない。
人格はインストールしてあるからそのデータをもとに判断している・・・と思っていた。

「知りたいの?」
「俺のモデルになった人だろう?興味があるんだ」

興味や関心、好奇心、そんな人間らしい心があるらしい。
よくは分からないが、もしかしたら感情もあるのだろうか。

「平和島静雄。来神高校出身の池袋最強の男」
「最強?強いのか?」

好奇心あふれる目を眺めて、画面に静雄のデータを開いた。
画面を食い入るように覗き込む津軽を眺めつつ、肘置きにもたれ掛かる。
なんで教えてやる気になったのだろう?
臨也は自分でも不思議だった。
以前静雄を調べている記者に会ったときは、かけらも教えてやる気にはならなかったのに。
ひょっとしてデータを教えることで静雄に近付くと期待しているのだろうか。
たまに自分の行動が分からなくなる。

「臨也くーん、たいくつー」
「サイケはシズちゃんに会ったことがあるのか?」
「あるよー」

全身を使って自動販売機を持ち上げる静雄の真似をする。
ガオーと言っているのは見たことがないのだが、サイケのアドリブだろうか。

「シズちゃんは俺が臨也くんの子供だと思ってる」
「ちょっと待て!!」

聞き捨てならないぞそれは。
しかもただでさえバカな静雄だ、これだけそっくりな臨也とサイケ、血が繋がっていると思い込むのは簡単だ。
いつもながらややこしいことをしてくれるあほだ。

「通りでこないだ会ったとき蟲じゃなくてゴミを見るような目だったはずだ!」

目が合った瞬間唾を吐かれた理由が今分かった。

「つ、津軽!俺ちょっと用事思い出したから、あと頼んだよ!」
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