デュラララ!!

□昔話をしよう
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「世の中にはいるもんだねぇ」

臨也がコーヒーのカップを揺らす。
向かいに座る新羅が湯気の昇る紅茶を飲む。
学ランを来た二人が高級ソファに座り、コーヒーと紅茶を飲んでいる。

「あまり気乗りはしないけど、一応何がと聞いておこうかな」

紅茶を机に置き、新羅が足を組み、臨也に目を向けた。
カップから口を離した臨也がニヤリと歪んだ笑みを浮かべる。

「人外の生き物っていうの?所謂化け物さ」
「セルティのことを言っているんなら、君の身体を六つに分解することになるよ」

穏やかな表情を浮かべる新羅は、それでも怒りを覚えているらしい。
いつも飄々としているこの男にも感情の並みはあるようだ、臨也は笑みを消すことなく、むしろおかしそうに笑った。
臨也の本性を知りながらも近くにいるこの友人にも、人間らしい感情がある。
それが臨也にはうれしくて愛しくて仕方ないのだ。

「冗談だって、怒らないでよ新羅。怖いなぁ」

大げさに肩をあげてみせ、背もたれに腕を置く。
ガラス張りの扉の向こうにいるライダースーツを着た人物を眺める。
まるで見張るように腕を組み、新羅と臨也に身体を向けている。

「俺は人外を愛すことは出来ないけど、非日常を愛することは出来るよ」
「はっきりしない物言いだね」

赤い瞳が愉快そうに細められる。
どこまでも口が達者なやつだ。
新羅もスコットランド育ちのセルティのために日本語を勉強した。
言い回しは上手いし、より多い語彙を身につけた。
言わばその点だけという限定付きで、二人は似ている。

「俺は人間が好きだよ、愛してる。だけど人間は単純だ。予想の出来る範囲でしか行動しない。そこが愛しい。でもさすがに退屈して来ちゃうんだよね」

折原臨也という男は矛盾だらけだ。
人間が好きだというわりには、人間たちを酷く傷付けることに楽しみを見出す。
人間の行動が退屈だと言うわりには、そんな単純がところが愛しいのだと語る。
彼の人間愛は誰に対しても有害なのだろう。

「だから、たまにはああいう異常も欲しくなるよね」
「私もほかの人とは違うセルティを愛しているから否定はしないけど、セルティを貶めるようなことは許さないよ」
「あはは、"アレ"も俺の思う通りに動いてくれるのかなぁ」

アレという言葉に新羅から表情が消える。
それを見て臨也はいっそうおかしそうに笑った。

「・・・臨也、君って本当に嫌なやつだよね」

その声に吊られるように新羅も笑顔を浮かべた。
空になったカップを脇に寄せて、新羅は組んでいた足を解く。

「そんな異常に憧れる君に、僕からとてもいい話だ」

バイブレーションに震える携帯をいじりながら退屈そうな視線をを投げる。
近頃妙な連中とつるみ出したらしく、時折こうして携帯をいじっている。
人の秘密を探るのが大好きなこの男は、各方面で顔が利くのだろう。

「私が小学校の頃の話だよ」

いつものことなので気にした様子もなく、新羅は懐かしそうに話し出す。
自分には受け止められなかった、異形の怪物の話を。

「どーでもいいけど新羅、一人称バラバラに使う癖、治したら?」

仮にも医者志望でしょ?と冷めた声色で尋ねる。
興味は、ないようだ。
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