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□真剣勝負!
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食事時、全員がポカンとしながらその光景を見ていた。
中学を卒業してから久しぶりに並盛組が集まって沢田家で食事中。
リボーンでさえも箸を止めて微妙な表情で一点を見つめていた。
沢田が少しキョロキョロと周りを見渡し、獄寺の方に手を差し出す。
すると至って自然な流れで右側にあった醤油瓶を手渡す。
そしてそのお返しのような、というより当然のように沢田がソースを獄寺に手渡した。

「・・・はひ」

完全に箸を止めて二人を見やるハル。
獄寺の右側にいる山本はいつも通りニコニコと二人のやり取りを見ている。
ちなみにこの場で同じような笑顔を浮かべているのは沢田の母である奈々と山本だけだ。

「ごっ、獄寺さん!」

がたりと音を立てて茶碗と箸を置き、机をバンと叩いた。
高校に上がって髪を切ったハルは、相変わらず沢田のことで獄寺とよく衝突する。
急に声をあげたハルに獄寺はギロリと睨みつける。

「え、どうしたのハル」
「どうしたのじゃないです!いつの間にそんなツナさんとディープな関係になったんですか!」

指を指された二人は、は?と声を上げてお互いを見合う。
高校が同じで相変わらず昼食も一緒に食べている山本は二人のことはよく分かっているため、隣の獄寺の頭をぽんと叩く。

「こいつらはいつもこんな感じだぜ」

すぐに強く払われたが、ハルは納得できないようだった。

「ふふふ、二人とも仲良しなんだね」

唖然としていた京子だったが、ニコニコと笑いながら食事を再開する。
微笑まれながらそう言われて、沢田と獄寺はまたお互いに目をやって同時に赤くなった。

「おっ俺は十代目の右腕だぞ!十代目の考えてることは察せて当然だろ!」

叫びながら顔は真っ赤になっている。
沢田は隣で俯きながらもくもくと白米を食べ続けた。
納得できないまでも、奈々に言われてハルはおとなしく座った。
一部だけ気まずい空気が流れる中、リボーンがぽつりと言った。

「ダメツナはいつか獄寺がいないと靴下の場所も分からなくなりそうだな」

ニヤリと不適な笑みをこぼすリボーンに、三者三様の反応が返ってくる。
山本はそれ分かるーとかいいながら爆笑だ。
ハルと沢田は真っ赤になってリボーンに講義するが、当人は聞いちゃいない。
ちなみに獄寺は言葉の意味が分かっていない。
イタリア育ちなのだ、日本の例え方では伝わらないらしい。
そして近い将来その言葉通りになるのだが。

「つーかそれ俺確実にダメなやつじゃん!」
「今もダメだろ」

間髪いれずに突っ込まれ、ぐ、と言葉に詰まる。
ハルはもう食事どころではなく手を組みながらよよよと泣き始めた。

「そんなのおかしいですぅ〜それはツナさんの妻の役目なはずです!」

隣に座る京子にすがり付いて泣き喚くハル。
沢田の隣では山本が獄寺にリボーンの言葉の意味を説明していた。
ちなみに山本の説明はこうだ。

山本:日本の旦那さんにはさ、奥さんに身の回りの世話全部してもらうって人が多かったんだよ。
だから旦那の服とか下着とか全部奥さんが管理してて、そのおかげで旦那さんは奥さんがいなくなったら自分の下着とか靴下の場所すら分からないことがよくあるのな。
小僧が言ってたのはつまりツナは将来・・・

そこまで説明して獄寺は山本の口にコロッケを詰め込んだ。
その顔は真っ赤だ。

「山本・・・・獄寺君に説明してくれるのはいいんだけど、改めて言われるとなんかすっごい恥ずかしいんだけど・・・」

うっすらと頬を赤くしながら後頭部をかく。
その間にハルは復活して声高く叫んだ。

「勝負です獄寺さん!ハルと獄寺さん、どちらがツナさんの妻に相応しいか!」
「バカなのかアホ女!俺は男だ!」

楽しい食事会は一転してハルと獄寺が睨みあう。
ハルは沢田の腕をがっしりと掴み、抱きついた。
それを見て獄寺も沢田の反対の腕を抱きしめる。

「十代目はまだお食事中だ離せアホ女!」
「ハルはアホじゃないです!獄寺さんこそ離してください!」

沢田の腕の引っ張り合いをしながらお互いを罵り合っている。
腕が痛いと叫びながらもどうすることも出来ず、されるがままの沢田。
ホントは仲良いんじゃないのと思いつつ他の人に助けを求めて視線を送るがみんな笑顔だ。
笑ってないで止めてくれと叫ぶ。

「ツナ、モテるのなー」
「ハルちゃんも獄寺君もがんばれー」
「ツー君たらぁ、こんなかわいい子に取り合いされちゃって」
「痴情の縺れは酒の肴にもってこいだ」

いつの間に着替えたのか、着物に徳利とお猪口を持ち出すリボーン。
そんなに勝負したいならと、キランと目を光らせた。
沢田はいやな予感しかしないが、ハルと獄寺は引っ張るのを止めてリボーンに向き直った。

「良妻に必要な条件、それは」

獄寺とハルが神妙な目つきでリボーンを見つめる。
そもそも獄寺は男だから妻になれないとか、ハルと結婚の予定はないとか、そういう根本的なことは無視されるらしい。
大体先ほど獄寺は自分で妻じゃないと言い張ったばかりなのに。
沢田はため息をついた。

「家事、育児、そして夫への気遣いだ!」

プラカードをあげて断言するリボーン。
そのプラカードはいつ作ったんだよとか、なんで無駄に達筆?とか、いろいろ言いたいことはある。
だがそれより何より、二人が正座までして真剣に聞いていることに突っ込みを入れたい沢田だった。

「リボーンちゃんの言う通りです!」
「なるほど・・・それが日本でよく言う大和撫子というやつですね!」

ママンみたいな女性のことだ、とリボーンはじゃじゃーんという音と共に奈々を指した。
その音はどこから出たんだよ。
食事を終えてきゃっきゃと走り回るランボとイーピンに囲まれながら沢田は頭を抑えた。
まずは料理だよ!そう言いながらまたいつ着替えたのか割烹着にハリセンを持っている。
二人は元気よく返事をして立ち上がった。
なぜいつの間にかリボーンの良妻訓練が始まっているのだろうか。

「ふふっ、二人ともがんばってね!」
「今度はどんな遊びだ?」

キッチンへ向かうハルと獄寺についていきつつ、沢田は心の中で山本的―――!と突っ込んだ。
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