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□メリークリスマス
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ほんの冗談のつもりだったんだ。
いくらむちゃくちゃな父さんだからって、こんなことマジでするわけない。
それが予想に反して、獄寺君はそっちも平気だったんだ。
だから父さんも調子に乗って、それでこんなことに。
王様ゲームで王様になったハルに命令されて全員の飲み物を買って帰ってきた俺はその悲惨さに眩暈がした。
大惨事、まさにその言葉ばかりが頭に浮かぶ。

「ああじゅうらいめぇ、おかえりなさいですぅ」

大惨事を巻き起こしたであろう張本人は、リボーンと向かい合って酒を注ぎ合っていた。
ことの始まりはクリスマス前日、つまりイブ。
長らく留守にしていた俺のダメ親父もとい九代目ボンゴレの門外顧問である沢田家光が帰ってきたことから始まる。
そう、その家光の一言によって。

「ツナ〜降りてきたか!クリスマスパーチーやるぞ」

パーチーとか言ってきた父親に引くよりも先に、帰ってきていたことに驚いた。
たっぷり出された冬休みの課題をやるために来ていた獄寺君と山本も。
が、しかし。
予想通り二人は簡単だった。
獄寺君は俺の父親というだけで機嫌良く昼間っから酒を仰ぐ父さんに杓をしている。
山本は相変わらず山本的にそうなのなで済ませた。
常々思う。
自分で言うのもなんだけど、ここ最近、俺が一番の常識人を誇っているんじゃないかと。

「イブから本番まで騒ぎまくるからな」

早くも順応した自称右腕と親友を眺めているとリボーンが背後から拳銃を突きつけていた。
意味もなく銃で脅すのは殺し屋の性なのか。
それともただ単にリボーンの気分なのか。
多分後者だ。
母さんは父さんが帰ってきたことでずいぶん上機嫌で、クリスマスになってもいないのにご馳走三昧だ。

「リボーン、もちろんクリスマスなんだからサンタコスだよな?」
「ああ、もうとっくに特注で作ってある。着るやつはあみだで決めたぞ」

トナカイ衣装もあるぞ。
また意味の分からないことを言っている。
なんだよクリスマス=サンタコスって。
さっと一瞬で着替えたリボーンはイチゴショートケーキのコスプレだ。
というかもはや仮装だよ、それじゃ。
リボーンが勝手に作った変なギミックでその衣装とやらが出てきた。
しかも床から。

「どこにあったんだよこれ!」

現れた衣装は三着。
一着はサンタカラーのミニスカートノースリーブ。
ニーソックスに二の腕まである長い手袋。
白いファーが可愛らしく揺れていて、いかにもって感じの衣装だ。
ていうか寒くないのこれ。

「安心しろ、これ着て外行けとか言わねぇからな」

当たり前だ。
これで外に出たらただのコスプレマニアか変態だ。
即補導決定だろ、てか俺が着るんじゃないだろこれ女の子用だろ。
両脇にあるのはサンタとは打って変わって単純な作りのトナカイの着ぐるみ。
ていうか力抜きすぎでしょこれ。
サンタの方と比べて雑すぎる。

「ツナはこれ誰に着てほしいんだぁ?」

顎に指を擦りつけながらニヤニヤと聞いてくるのはホロ酔い加減の父さん。
獄寺君はいつの間にか父さんと一緒になって日本酒を飲んでいた。
こら未成年、て、獄寺君タバコも吸ってたね。
誰に着てほしいかといえば、やっぱり京子ちゃんみたいなかわいい女の子。
ハルも喜んで着そうだよな。
ビアンキあたりでもいいかな、スタイルいいし。
絶対領域っていうの?マニアじゃなくても一度は夢見るよね。

「エロツナめ」

タレ眉が一層馬鹿にした表情に拍車をかけていてむだにむかつく。
もう一度その衣装に目を向けて、酒を飲んで大騒ぎする机に目を向けた。
ああ、獄寺君とかも絶対似合うよね。
リボーンは特に男女決めて選んだとは言ってなかったし。
想像してみたけど、やっぱり似合う。
色白いし、スタイルいいし、細いし、顔かわいいし。
雲雀さんや骸なんかも似合うだろうけど絶対着ないというか来ない。
お兄さんや山本はスポーツマンだし、どちらかというとトナカイの方がしっくり来るような。

「変態ツナめ」

口元の微妙な変化で馬鹿にした顔を更に腹の立つ顔にしたリボーンに膝をどつかれた。
思わず妙な叫び声をあげて倒れた俺の元へ獄寺君が駆け寄ってきた。

「十代目、大丈夫スか?」

遅れて山本もやってくる。
ちら、と獄寺君の方を見ると、飲酒のせいで頬がうっすら赤く、軽く酔ってきて眠いのか視線が揺れる。
水の膜が張ったようなエメラルドの瞳が心配そうに揺れる。
こうして見るとホント、獄寺君て美人さんだよなぁ。
うん、絶対似合う。

「いやぁ、獄寺君お酒強いねぇ」
「お父様こそ」

獄寺君の銀髪をふあふあと撫でる。
ニコニコと笑顔を向けながら日本酒のビンを持つ。
呂律が回らなくなってきている父さんに比べて、獄寺君はまだしっかりした発音をしている。
もしかしてかなりのざるなのかもしれない。
そんなこんなで騒いだ父さんは、相変わらず夜の九時には爆睡していた。
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