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□独占欲
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「ツッ君!獄寺君が、獄寺君が!」

携帯の向こうで酷くうろたえた京子ちゃんの声に、頭が真っ白になった。
隣にいた山本も、急に顔面蒼白になった俺を見て驚き戸惑っている。
すぐに居場所を聞いて、その場所に山本と一緒に急行した。













「あ、獄寺君」

高校からの帰り道、偶然ケーキ屋から出てきた笹川とアホ女に出くわした。
私服に着替えているところを見ると、学校が終わってすぐに帰ってここに来たようだ。
わめくアホ女に軽く相槌を打ってさっさと家に帰ろうとすると、笹川がせっかくだから一緒に食べるかと聞いてきた。

「いいですね!ツナさんとところに行ってみんなで食べましょう!」

中学時代アップにしていた髪を下ろして、短めに切った髪を揺らしながらはしゃぐハル。
笹川京子。
中学の時からの十代目の想い人。
十代目の気持ちに気付いてないのか、相も変わらずのほほんとした女だ。
だが、芯の強い女性だ、十代目にふさわしいような。
ずき、と痛む胸に知らぬフリをした。

「うるせーアホ女。行くならお前らだけで行け」

十代目の腹心の部下としては、ここでハルを引き止めて笹川と二人でいられるようにしてさしあげるべきだ。
だが、今はどうしても一人になりたかった。

「なんですかその言い方!ホントに愛想のない人ですね!」

ぎゃあぎゃあとわめくハルに嫌気が差して、無視して帰ろうかとも思ったが、思い直して十代目の家に行くことにした。
最近十代目と親しい人間として、笹川とハルの周囲にも不穏な気配があると言ったリボーンさんの言葉を思い出したからだ。
護衛でついていって、それでランボあたりを遠くに投げ飛ばして、イーピンに雲雀の写真でも見せてやれば。
アホ女はランボを追いかけていなくなる。
十代目と笹川が二人になったところで俺も帰ってしまえば。
ずきずきと痛む心臓には黙れと叱咤した。

「行くならさっさと行くぞ」

ざわざわと騒がしい駅前を三人で歩く。
ハルと笹川は、どのケーキを最初に食べるかとか、ランボにはイーピンにはどれとかそんな話で盛り上がっていた。
十代目の気持ちにも気付かないくせに、いい気なもんだ。
軽く舌打ちして前を向いた。
高い高層ビルが強めの日差しを浴びて光っている。
上の方で、チカ、と何かが光った。
無駄にいい聴覚が機械音を認めた。
右手に炎を灯し、フレイムアローと瓜をあけた、というかそれしか持ち歩いていない。
スィステーマCAIは家だ。

「やっぱりショートケーキも定番だし、はずせないよねー」

飛んでくる銃弾の方向が笹川だと直感した俺は伝えようと振り向くが、間に合わないと悟った。
ダメだ、笹川に当たったら、十代目が悲しむ。
やさしいあの人は守れなかった俺を攻めたりしないだろう。
でも恨むことはあるかもしれない。
守れ、守れ、守れ守れ守れ

守れ!

笹川とハルを突き飛ばし、防ぐ形に立ちふさがった。
笹川の短い悲鳴とハルの講義の声が聞こえた。
心臓に向かってくるライフルの銃弾。
前方へ後方へ、血がまるで噴水のように飛び出し、すぐに収まった。
どくどくと流れる血液を右手で押さえて、左肩に乗る瓜の声にライフルを持った男を思い出す。
フレイムアローの標準をあわせた。

「果てな」

ダイナマイトがセットされたフレイムアローはまっすぐ男の頭を貫いた。
口の中が鉄臭い。
酷い激痛に頭が薄ぼんやりとしてくる。
ああ、俺ここで死ぬのか。
せめて死ぬときは十代目の背中を守って死にたかった。
気付くと生暖かい水溜りに倒れていた。

「・・・ぅ、ゎ」

これ、全部俺の血かよ。
暗くなっていく視界の端に、瓜の嵐の炎が見えた。
顔についた血をなめとってくれた気がした。
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