.夢

□その先のあなたに
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「ぴよぴよ、お腹へった」



部活が終わり、引退してもなお、部活に顔を見せるテニス部元マネージャーの先輩と帰る
ふて腐れたような顔でオレの後ろを歩いてるものだから
目線だけ振り返って、「オレは日吉です」と言ってやった
先輩は「わかってます」と口を尖らせ、可愛いげのない返事をすると、更に機嫌が悪くなってしまったようで、仕方なく疲れを和らげるために常備しているチョコレートを、上着のポケットから取り出し立ち止まる


「どったのぉ〜?」


だらし無い声に、ため息がでる
それでも、手にしたチョコレートを、隣に並んだ先輩に差し出す
先輩は頭に「?」を浮かべて、オレの手にあるものを受け取った

決して十分な甘さはないけれど、先輩の口に合うだろうか
苦いと銘打たれたチョコレートは、嫌いではないだろうか


「チョコレートだ、いいの?」

「…、ええ、家に着くまで後ろでギャーギャー騒がれるのも、迷惑ですから」


「なんだそれー」と文句をいう先輩を置いて歩き出す
手渡す時、先輩に微かに触れた指先が熱い
胸に届くその熱が、早い鼓動を生んでいる事を、できれば知られたくはない


「あ!」



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