版権小説

□苛めっ子
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かなり近い位置に奴がいた。本に視線をやっているのにも関わらず、視界にピンクのコートが見えるまでに近くに。
左には壁、前後は本棚、そして右には――ドフラミンゴ。絶望的だ。

「何しやってんだ」
お前こそ何の用だと叫んでやりたかったが、グッと我慢する。何を言い返そうと遊ばれるのは目に見えているから。

「暗い、狭い、汚い――何が連想される?」
どっか行け!向こうに行け!心の中で奴を罵倒しまくる。
実際に声に出さないのはコイツが恐いからだとは誰にも言えない。

「あぁ…もしくは体内回帰願望でもあんのか?」
持っていた本を取られ仕方なしに奴に顔を向けた。本を取り返そうと手を伸ばすが、奴が本を上に上げたのを見てすぐに諦めた。

「取り返してみろよ」
楽しそうに笑われ、カチンとしたが自分を抑える。
どれだけ手を伸ばそうとも、どれだけジャンプをしようとも届かない物は届かないのだ。

身長差。
一般人よりかなりでかいコイツ。
ウザすぎるだろ、これは…嫌味か?いや、俺の身長は普通だ。むしろ高い位だ!
ギリギリと歯をくいしばり正面に居るドフラミンゴを睨みつける。

「俺は害虫でもなければ体内回帰願望も持ち合わせていない。――それに身長は普通だ」

「身長の事なんか一言も言ってねぇ。気にしてんのか」
いらぬ一言を付け加えてしまった俺に奴は笑った。俺自身、しまったと思ったが言ってしまった後にどうこう考えようと無駄な事。

「害虫も嫌、赤子も嫌、チビでもないときた!ではお前は何なんだ?」
まともに取り合うな…
一々取り合うな…

「その本はちょうど読み終わった所だ。他の本を借りていく」
奴のでかい体を押し退け部屋の隅から出た。借りて帰る本を持とうとしたが、体が言うことをきかずクルリと反転しドフラミンゴの前まで戻ってきてしまった。

「もう少しで読み終わるんじゃねぇの?いーのか?」

「それじゃあ、それも貸せ」

「後少しだ。読んでいけよココで」
ドフラミンゴの指がクイッと動き、それに伴い俺の身体も動いた。
奴の手から本を受け取り、読みたくもないのに本を読まされている――しかも、もう読んだページをだ。

「……」
どうせ読むなら先程の続きから読みたい。
ページを変えたくても指が動かない、かと言って文句を言う元気もない。
あからさまに不機嫌そうな俺にドフラミンゴは笑い混じりに話し掛けてきた。

「あぁん?読めねー字でもあんのか?」
帽子を取られ棚の上に投げられた。
奴は能力を解き、身体は自由になった。
手早く本を抱え棚の上にある帽子に手を伸ばしたが届かない。
背伸びでも駄目。
軽く飛んでみたものの届かない。

「フッフッフッ」
後方から笑い声が聞こえた。
気にするな。いつもの笑いだ。

大きく飛び跳ねてみるが届かず、持っていた本を何冊か床に落としてしまう。
笑い声が一層大きくなった。

「うるさいぞ!」
ドフラミンゴを一別し、持っていた本を力の限り棚にぶつける。
ぶつける度に棚は軋み、揺れの反動で帽子が少しづつ動きやがて床に落ちた。
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