版権小説

□苛めっ子
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部屋の隅にある本棚の前で本を読む俺。

少し離れた所にあるソファで書類をみるドフラミンゴ。

同じ空間に居ながら俺達は一言も言葉を交さずに自分の世界にひたっていた。
出会ってから数時間経つが、まだ一言しか話していない。

「本借してもらう」

「好きにしろ」
それだけだったがいつもの事だったので問題はなかった。
本だけ借りてさっさと帰るつもりだったが、試し読みをしていたらいつの間にか試し読みでは済まないページを読んでいた。
本の半分を過ぎた頃から、いっそのこと全部読んでしまい別の本を借りて帰ろうと思っていた。船員達には遅くなるとは伝えてあるし、騒がれる心配もない。

一つ心配があるとすれば、ドフラミンゴが暇そうにしている事ぐらいだった。
書類を見終わったのか手持ちぶさたで凄く暇そうにしていた。
奴から見えない位置に体を動かし出来るだけ気配を消す。ページを捲る音すらたてずにそれでも本を読む。
もう少し、もう少しで読み終わる。読み終わってしまったらこの部屋から直ぐに出て行ってやる。
既に借りていく本は何冊か決まっていたし、それを持って帰るだけだ。奴が大人しくしている間に―――さっさと出ていけばよかった…

ああ、本当にさっさと帰るべきだった…

背中に視線を感じる。
誰とは言わないが見られている。

下手に意識したりせずに本を読みながら部屋の奥ばった本棚の隅に移動し、座った。
多少窮屈だったが、中々の居心地に俺は心地よく感じた。
これでようやく視線から逃れられた……わけでもなく。
更に状況が悪化してしまっていた…
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