オリジナル

□ブロンド。
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雨は、一向に降り続いている。足跡が消えるのは時間の問題だろう。
安堵とも後悔とも言えぬ溜息が口から這って出た。
じわじわとあの感触が指先から蘇ってくる、その感覚が何とも不愉快で、机をなすりつける様に叩いた。すると、例の彼女から貰ったティーカップがかたかたと静かに揺れる。
時間の問題、とは良い言葉だ。
ぼんやりとそのようなことを考えて、ソファーからゆったりと立ち上がる。気持ちが幾分か、落ち着いてきた。
すぐ傍の窓に手を掛けると縁の部分が掌に当たり、ひやりとする。
現実味が無くなったこの世界で何も思うことはない、とばかりに開け放った窓から身を乗り出す。
上から、蔑むような雨の雫が黒い髪を濡らしていく。
窓の外の世界にも、興味を向ける人は皆無であった。
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