オリジナル

□ブロンド。
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風邪なんて、生まれてから一度も引いたことがなかったから、対処の仕様がわからなかった。
虚空をなぞるように眺め、ぼんやりとした視線をアオイに投げ掛けると、彼女は心配そうに首を傾げた。少し長いブロンドがさらりと右に流れる。美しかった。

「きのう、あめ、みやせ」

彼女が淡紅色の口唇を薄く開けたり閉めたりし、またもとの仏頂面に戻った。どうやら昨日、僕が雨にも関わらず傘もさしていかなかったことを言っているのだろう。
これは心配してくれていると取ってもいいものだろうか。
今までどんなことにもくだらない、との一言で片付けていたアオイが嘘のような変貌を遂げた。このまま探せばきっと、

「わたし、できない」

機械のような音声を発したアオイは、やっぱり仏頂面だった。
僕は少しベッドから身体を起こして、水を口に入る一回分だけ飲むとアオイにいつもの微笑みを向ける。

「アオイがいてくれるだけで僕は辛くないから」

きっと、もとにもどる。
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