オリジナル

□ブロンド。
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雨は嫌いだ。
次から次へと落下してくる雫を眺めては、溜息を長く吐き、物思いに更ける。
やがて青天が見れると期待すれば、するだけ無駄であり、何もしない、静かな時が流れた。

私、ちょっとだけ生きたくなくなった。

こう呟いた彼女は、確かに生きていた。
碧眼の彼女は笑わない。
だがあの時は確かに微笑み、ブロンドの髪を静かに揺らしていた。
彼女は綺麗だった、と僕は記憶している。
他に鮮明に残っているのは、彼女の鮮血。
初めて見る情景は忘れられぬとよく言ったものだ。

幾ら雨を睨んでいても、己が行動しなければ事は限り無く延長される。
大儀そうに立ち上がり、風呂場へと歩き始めた。
僅かに見える浴槽からは乱れた金髪が此方を見据える。

ああそういえば彼女に贈った鞄もこんな色をしていた。
誕生日の日、矢張り彼女は微笑む事なく仏頂面の模範の様な表情を示し、プレゼントを受け取ると、只質素にありがとうと喋った。
言葉は暖かかった。
彼女は何に対しても無関心かつ無表情という姿勢しか出来ない不器用な女なのだ、と体得している人は僕を除いて一体何人居たのだろう。

浴槽に転がる蝋燭の様な白い人体をちらと見、僕は自嘲の意義も含め小さく微笑んだ。
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