オリジナル

□ブロンド。
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死体の残り部分は、
アナウンサーが無表情で悲惨なニュースを告げる。
そういえばいつも無表情な女が居たな、と思い出したけれども名前までは浮かばなかった。
り、リ、Li、確か外国人だった。

昨夜からの土砂降りは幾つかの水溜りを残して去って行き、仄かに泥の匂いもする。

「バラバラ死体だなんて、相当臆病な殺し屋だな」

わたしの横に坐る男が何故か嘲笑うように小さく言った。
彼はわたしの付人であり、名をミヤセと称した。
それが本名ではなく偽名である事は以前から勘づいていた事であるのだが、本名を知った所で喋れぬわたしには碧を碧で塗るぐらい無意味な事に過ぎなかった。

碧といえば、ミヤセはわたしの事をアオイと呼んだ。
何故かは判らなかったが、彼が述べるにはわたしの眼が青いかららしい。
碧眼だ、と髪を撫でてくれた。


く、だ、ら、な、い。

バラバラ死体のニュースを見たわたしは酸素不足の鯉のように口をぱくぱくさせると、ミヤセはわたしを見て顔を和らげた。

「アオイは何も知らなくていい、世も真実も」

いい、の意義が曖昧だった。
ミヤセは言い切った後、わたしを後ろから包み込んだ。
頭が彼の体温で暖められていく、あったかい。
傍から見れば恋人に見えるかも知れない。
だが彼はわたしの通訳と世話役であり、わたしもミヤセも一切その様な感情を抱いていない筈なのだ。
ミヤセと生活し始めて何年が経ったであろう。
それはもう遠い過去の話なのだろうか、あの女と同様に思い出せない。

記憶を穿る度、なぜか手と腕の場所が少しひんやりとした。
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