ノーネーム

□雨なら本を読もうよ
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今日は雨降り。

お外で遊べないので、わかしくんは図書室に来ました。


「…だぁれもいない…」

みんなホールで遊んでいるのか、図書室には誰もいませんでした。

「なによもうかなぁ〜…あ、にゃんにゃん!」


わかし君が手に取ったのは、表紙にとらねこが描いてある一冊の絵本。

「ひゃくまんかい…いきた、ねこ」

本の題名を声に出してみるわかしくん。


「ひゃくまんかい…?」

言葉の意味がわからないのか、繰り返し反芻するわかし君。


「…誰だ?」


「きゃぅっ!」


急に声をかけられ、びっくりするわかしくん。


顔をあげると、ばら組のあかいネームをつけた男の子がいました。


「あ、おまえいっつもりょうになかされてるやつだな!!わかしだっけ?」

あはは、と楽しそうに笑って言うので

「このあいだなかなおりしたもん!!」

わかしくんも一生懸命言い返します。(でも既に涙目)


「いいどきょうしてんじゃねぇの!気に入った!!おれさまは、ばら組のあとべけいごだ!!」


そう言うけいごくん。

「けぇご…けぇちゃん?」

小首をかしげながらそう呼ぶと

「なっ!そのよびかたやめろ!!おれは女じゃねぇ!ちゃん付けはやめろ!!」

あとべくんはかっこわるいことがだいきらいなのです。

「(びくっ)ご、ごめんなさい…けぇご、おにいちゃん…」


ひよしくん、目がうるうるしてきました。また泣いちゃいそうです…


「あぁこら!なくなよ!!」

焦るけいごくん。自分より小さい子を泣かせるなんて、そんなみっともないことできません。


「あっそうだ!!わかし、おれさまがその本読んでやるよ!!」


「ほんとう!?」


ひよしくんの表情がぱぁっと明るくなります。

ひよしくんは、ひとりで本を読むのも好きですが、読んでもらうのも大好きなのです。

「(よかったわらった…)おら、本かしな!!」

「うん!!」



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