素敵小説

□きっと、言葉じゃなく
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「誕生日、ですよね」
「知ってたのか」
あの他人に興味なさそうな奴が
「プレゼント買いに行くの付き合わされたんですよ」
「えーと…お疲れさん」
「本当に疲れましたよ。散々断ったって言うのにしつこくて、しかも買うものもまだ決まってなくて何がいいかとかいちいち聞いてきた上に延々店を連れ回された後、結局最初の店で買ったんですよ」
「うわ…すげぇ想像できる…」
「……思い出しても腹立たしいです」
「あー…なんか、悪かったな」
「そこで宍戸さんが謝る事にも腹が立ちます」
…難しい奴だな
「じゃあ、どうすればいい?」
「…財布大切に使ってください。俺も一緒に選んだんで」
「ん、あ、分かった。大切にすんよ」
まさか日吉からこんな言葉が出てくるなんて思ってもみなかったから少し戸惑った。もっと気の利いた事言えないんですかとか、そんな嫌みったらしい言葉が返ってくると思ってたし

「そろそろ部活始まりますね」
「今何時?」
「12時40分です。じゃあ俺は一旦教室に戻るので」
「おう、また部活でな」
動き出そうとしてた日吉がためらいがちに宍戸さん、と呼んだ
まるで何か不可解な事でもあるようなしかめっ面で、口を開いて、閉じた。
そしてまた口を開き不機嫌な顔で
「……また部活で」
そのまま去っていった。何だったんだ。あの思わせぶりな間の取り方は
不思議に思いながらも部活に向かった



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