短編小説
□破顔一笑
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(出てこないが一部笠黄と早中要素アリ)
「解せぬ…」
俺の部屋に来て炬燵に入った早々、森山は言った。
またか。と思いながら俺は森山が放り投げた上着を拾い上げハンガーに掛けてやる。その間も「解せぬ」とか「有り得ない」とか呟いている。
取り敢えず話を聞くために俺も炬燵に入ったら、バンッと炬燵に手をつき、「有り得なくね!!?」と声を張り上げて言った。
「森山声煩い。あと炬燵壊すなよ?」
「…わ、悪い。じゃなくて有り得くね!!?」
「だから何が」
「笠松と黄瀬と早川と中村だよ!!」
「………は?」
俺はてっきり今日もナンパが失敗して「解せぬ」と言っていると思ったら、どうやらチームメイトの事が解せぬらしい。何か不快に思った事があったのだろうか。
俺が見た感じでは、今日の午前中の練習では特に変わった事は見当たらなかった。練習後部室で着替えている最中は……四人は各々午後はどこどこで待ち合わせ、とか話していた気がする。
「…リア充爆発しろ」
森山は炬燵に突っ伏して言った。
そういうことか。
「僻み?」
「……………リア充ども末長く爆発しろ」
「それ貶してないだろ。寧ろ祝福しちゃってるし」
「だって考えてもみろよ。あの四人は相手が男だとしてもリア充だぞ?もうリア充末長く爆発しろ」
「はいはい」
なんで俺より笠松が先に恋人出来るかな〜…相手黄瀬だけど。黄瀬は黄瀬で周りに女の子がいるのになにゆえ笠松を選んだし。早川は可愛い後輩なんだけどなぁ〜、な〜んでラ行言えないかな〜。あれか、眼鏡っ子はモテるのか、だから中村もリア充になったのか…。てゆか俺ら置いてバカップルで出かけるとか何なの?クッソリア充ども末長く爆発しろよも〜。
一頻り貶してんのか祝福してんのかよくわからない事を発した森山は、そのまま仰向けに寝転んだ。
それから森山は近くにあったクッションをバフッと顔に起き何も話さなくなったので、俺は炬燵の上にまだ片付けていない月バスがあったのでそれを読む。あ、これ去年のI・Hの時の海常の記事載ってる。見るんじゃなかった。
「…小堀は、さ」
次はどれを読もうか悩んでいると、上体を起こした森山と目が合った。
何?と問えば至極真面目そうな声色で、
「好きな子っていないの?」
と問い掛けられた。
一瞬ドキッとなったが、俺の中でその原因はわかっているので、今は敢えて無視する。
「急にどうした?」
「…なんとなく。で、いるのかいないのかどっちだ!」
「いるけど?」
「…ッ!?」
選んだ雑誌をボーッと見ながら、何も考えず間髪入れず答える。言った瞬間、しまった…と思ったが時既に遅し。森山の色白な顔が一気に真っ青になった。
こういう時になんだが、森山は俺の事が好きだ。何故言い切れるか、それは俺も森山の事が好きだから。好きと気付いた時からずっと森山をバレない程度に見続けていたら、なんとなく彼からも視線を感じて。それはもう「そんなに見つめ合ってお前ら付き合ってんの?」と鈍感な笠松に言われてしまうほどに。
「あ〜……そ、だよな。いるよな、好きな子くらい」
力なく笑いながら森山も近くにある月バスを読み始める。逆方向から読んでいるという事を気付かぬ程同様しているらしい。
本当にミスった。彼の名を言っていないが、この想いを伝えるつもりはなかった。彼が好きという気持ちを隠したまま卒業するつもりだった。
なのに油断した。森山といるだけで思考回路はショート寸前。その所為……というのはなんだか違う気もするが、森山といると本当に余裕が無くなる。
「な、お前の好きな子ってどんな子?」
「…ぇ」
「えじゃなくて。……いや気になったっていいだろ。俺は、その、」
口籠りながらも話すのは、場の空気が気まずいからか。それでも何かを話そうとしている一生懸命な姿に、俺はまた惹かれていって。
「そうだな、…身長が高くて、笑ってる時の顔が凄く可愛くて、何事にも一生懸命で、でも時々おっちょこちょいで見ているこっちがハラハラしちゃう、……そんな子」
もうあれだ。ここで告白してもいいだろうか。
森山の事だから絶対良い返事をくれる筈。でもそれは、これから訪れる彼の幸せな人生を壊してしまう事になる。わかってはいるが、もう限界。
「えっと……1組の谷山さん?3組の立花さん?それとも4組の有栖川さん?いやまさか、世界史の雨宮先生か!!?」
「ん〜?まあ4人共各々魅力的だけど、残念ながら違うよ」
「うそだろー…」
じゃあ誰だー?教えろ小堀ぃー。
真剣に悩んでる姿も可愛いが、全くもって検討外れな考え。
何でそこに俺が入らないんだ?俺が男だからか?
と至極当たり前な事を考える。
「もう少しヒント欲しい?」
「もちろん!」
「手っ取り早く言うと、俺の目の前で俺の事考えてる人」
「?」
こんなに簡単なヒントを教えたのに考える森山。さっきから何度も言うが、可愛い。可愛すぎてニヤケそうになるのを必死に堪える俺。言っておくが、俺は変態ではない。
十分間を置いて漸く言葉の意味を理解した様で、徐々に彼の可愛い顔がこの時期には少々遅い鮮やかな赤い紅葉の様に染まっていった。
「間違ってたら、えっと、ごめん。その、小堀が好きな子って、もしかして、俺?」
「そう、森山のこと。俺は森山が好き」
答えを言えば、彼の顔は鮮やかな赤い紅葉を通り越して、茹で蛸の様に赤くなってしまった。
「……ガチ?」
「ガチ」
「…本気?」
「本気」
「ほ、本気と書いて?」
「マジと読む」
変な掛け合いの後、彼は微笑んだ。
その微笑みを見て、俺も微笑み返す。
そしたら幸せそうにふにゃっと更に微笑んで、
「俺も小堀が好きだ」
今まで聞きたかった言葉を囁いたのだった。
『一足遅れてリア充になりました!』
(これで常に小堀とイチャイチャできる!)(でも、場を弁えないとダメだぞ?森山)(はーい!)
END
アトガキ
小森ちゃん可愛いよほんわかするよ可愛いよ(^p^)
この二人は擦れ違いからくっつくと信じてる(笑)
2013/01/17