巫女夜叉
□其の身が辿る場所
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目が覚めると、そこは見知らぬ部屋だった。
『……ここは』
紅憐は起き上がり、きょろきょろと辺りを見まわす。
「目が覚めたでござるか!?」
背後で叫ぶような大声が聞こえた。身体を捻らせて見てみれば、そこには赤い鎧を纏った青年の姿。
『……そなたは』
「某は真田源二郎幸村でござる!!」
――真田。
『そなたが、猿飛佐助の……』
(という事は、私は敵軍に捕まったのか……)
人質など、きっと豊臣軍が助けに来る筈などない。それに、占いの道具が無ければ、久憐は只の無愛想な女でしかない。使い物にならない。出来るとしたら……、女中の真似事位、か。
ほぼ無意識の内に、手が鉄扇を求める。しかし……無い。そこに在る筈のモノが、無くなっていた。
「鉄扇なら、俺様が回収したけど?」
襖が開いて、佐助が入ってくる。
『……なぜ私を助けた』
というか、なぜ自分はこんな所に居るのか……?
「何でって……、あんたが急に気を失ったから、その間に殺そうかと思ったんだけど、旦那が来ちゃってさー……」
「それほどまでに強いおなごならば、是非一度手合わせ願いたいと思ったのでござる!!」
「それに、もしかしたらあんたを餌にして、豊臣を動かせるかも知れないと思ったしね」
……成程。
息の合った説明をどうも。
『で、私の武器を回収したと言うわけか』
「ま、そゆ事」
佐助の言葉に頷き、紅憐は立ち上がろうとした。が。
『痛い……』
足首に走る激痛。
「ああ、駄目だよ紅憐ちゃん。怪我してんだからさ」
見るとしっかり手当てがしてある。
(普通、敵の怪我など手当てするか?)