巫女夜叉

□其の身が辿る場所
2ページ/5ページ


 目が覚めると、そこは見知らぬ部屋だった。

『……ここは』

 紅憐は起き上がり、きょろきょろと辺りを見まわす。

「目が覚めたでござるか!?」

 背後で叫ぶような大声が聞こえた。身体を捻らせて見てみれば、そこには赤い鎧を纏った青年の姿。

『……そなたは』

「某は真田源二郎幸村でござる!!」

 ――真田。

『そなたが、猿飛佐助の……』

(という事は、私は敵軍に捕まったのか……)

 人質など、きっと豊臣軍が助けに来る筈などない。それに、占いの道具が無ければ、久憐は只の無愛想な女でしかない。使い物にならない。出来るとしたら……、女中の真似事位、か。

 ほぼ無意識の内に、手が鉄扇を求める。しかし……無い。そこに在る筈のモノが、無くなっていた。

「鉄扇なら、俺様が回収したけど?」

 襖が開いて、佐助が入ってくる。

『……なぜ私を助けた』

 というか、なぜ自分はこんな所に居るのか……?

「何でって……、あんたが急に気を失ったから、その間に殺そうかと思ったんだけど、旦那が来ちゃってさー……」

「それほどまでに強いおなごならば、是非一度手合わせ願いたいと思ったのでござる!!」

「それに、もしかしたらあんたを餌にして、豊臣を動かせるかも知れないと思ったしね」

 ……成程。

 息の合った説明をどうも。

『で、私の武器を回収したと言うわけか』

「ま、そゆ事」

 佐助の言葉に頷き、紅憐は立ち上がろうとした。が。

『痛い……』

 足首に走る激痛。

「ああ、駄目だよ紅憐ちゃん。怪我してんだからさ」

 見るとしっかり手当てがしてある。

(普通、敵の怪我など手当てするか?)
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ