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□頂き物
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明けの月と銀の月

・相互記念に壱矢様に頂きました。
・当サイトの片倉小十郎(in成代主)&壱矢様の三成・刑部成り代わり姉妹主とのコラボ作品です。





今日も豊臣軍は平和である。
これもすべては、
「何だ?俺の顔に何か付いてるか?」
「いえ…何でもありません、兄上」
兄上…片倉小十郎のお陰だ。
<片倉小十郎>はとある青いのに仕えるはずなのだが、青いのもとい伊達さん家のまー君はこの世界には居ない。
そのせいだろう、伊達家に仕える事なく戦場を巡って傭兵をしていたそうだ。
そうやって各地を放浪していた兄上はある時に半兵衛様にスカウトされ豊臣の一員となったらしい。
……初めて会った時、私が寺から城へと連れてこられて紹介された時は驚きすぎて開いた口が塞がらなかった。今でもその時の事を話のネタにされる。
「?何でもねぇならいいが…悩み事なら言えよ?」
「はい」
「あっ三成、お茶のお代わりをくれないか?」
「ああ………ってドコから湧いて出た家康ゥッ!?」
「沸いて出たなんて……普通にこっそり侵入させても らった!」
それを普通と言わん。
それはコソ泥の言い種だ。
そして私と兄上の会話に紛れ込むな。
「これもお前への揺るがぬ絆の成せる業だな」
あー家康がウザくて泣きたい。
何故コイツはこんなにも無駄に堂々としているのだろうか。
「徳川ァ!テメェどの面下げてここに居やがる」
本当にまったくもって。秀吉様の傘下だった頃ならまだしも、実は家康はすでに離反済みだ。 秀吉様が斃れられるはずだった戦もすでに起きたが、兄上が家康を蹴散らした事でそ の死亡フラグは回避さた。…兄上にはどれだけ感謝しても足りない。
秀吉様が家康に討たれる事もなく、半兵衛様が病に倒れる事もなく……今もお二人は富国強兵の信念の基、豊かな国づくりと強き兵の育成に勤しんでおられる。閑話休題。
「片倉殿…貴方の言葉は身に染みたよ…だが!それとこれとは別だ!ワシは必ず三成を手に入れるっ!その邪魔をしないでくれ!」
…ストレスでお腹痛い。
きりきり痛む腹を押さえれば、兄上が心配に顔を曇らせた。
「三成、大丈夫か?侍医でも呼ぶか?」
「…いえ、それには及びません」
心因性だから原因をどうにかしない限りなー…はぁ…。
「お前は昔から腹が弱いもんな。ワシ特製の薬をやろうか?」
「いらん!」
何を盛られるか堪ったモンじゃない。
「遠慮する事はないさ。何なら口移しで飲ませたっていいぞ?」
何というギリギリ発言だろうか。もちろんアウトだ。
家康の顔なんか見てたらことさらげんなりとするので私は視線を庭へと移した。うふふ雀さんが居る、可愛いー。
「「徳川ァ…テメェいい加減にしねぇとぶっ殺すぞ」」
おや何故だ。兄上の声がステレオに聞こえた。
「人間サマの家に押し入るとは躾のなっておらぬ狸よナ」
と思ったら刑部でしたよ。阿修羅も裸足で逃げ出す形相だ。
刑部が右手をさっと振る。操る数珠を打ち込まれ吹き飛ばされる家康。
これはヤツも無事では済まないだろうと思ったが、
「っい、ったいじゃないか刑部。お前は相変わらず酷い男だな」
攻撃を食らったとは思えないほど元気に軽口を叩いてきた。
「…ヒヒ、狸狩りも楽では無い」
「吉継、俺も手伝うか?」
「どうぞ兄は三成に付いてやってくだされ。あの腹の黒い狸は我が払っておきますユエ」
立ち上がりかける兄上へと押し留めるように手の平を見せて刑部は笑う。家康へと向けた笑みは…あまり見ていたくない類の黒い笑顔だ。
「そうか。なら任せるが…無理はするんじゃねぇぞ」
「委細承知」
そして今日もまた刑部vs家康が勃発してしまった。
コレがなければ豊臣軍はもっと平和なんだけどな…はぁ…。
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