恋風-想いは星に似て-


月星の刻ー交わる声と心ー
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今は、蒼い夜。
月が、蝋燭もない暗闇の部屋に、淡い光をくれていた。
私は、そんな室内を見つめながら、扉に背を預け座っている。


この扉の向こうには―…


俺が、いる。
周瑜の背に寄り掛かっているような、そんな気持ちで。
静かな廊下。
ぼんやりとした、遠い蝋燭の灯を見ながら俺もまた、この扉に背を預け座っている。




「なぁ、周瑜…」

廊下に響く、俺の声。

「なんだ?」

部屋に響く、私の声。

「お前には月、見えてんのか?」
「あぁ、見える。窓の向こうから、こちらを覗いてる、」
「そっか…」

周瑜の声、扉越し廊下に届いて。
俺は、周瑜が見ている月の空を想像する。
白く蒼く、月は満月に輝いて。
そして、周瑜の瞳をも淡く光らせているんだ。
そんな、目を閉じれば広がる扉の向こう。


月光と、端麗な周瑜の姿。


「孫策、」
「ん〜?」
「君には星が見えているのか?」
「あぁ。微かにだけど、見えてるぜ?」
「そうか…」

扉越し、部屋に届く、孫策の声。
思い描く、孫策の見ている星空を。
一つ一つ、光を持って、夜空を闇にしてしまわないようにと。
淡くとも、弱くとも、その存在を孫策にしらせるよう。
そんな、目を閉じれば広がる扉の向こう。


空を飾る数多の星と、静閑の中の孫策の姿。



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