頂きモノ-novel-

□雪華
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[雪華*相互御礼]



おとずれた冬

降るものは雪

それは全てを
覆いつくすほどの白

身体も心も存在さえも隠す真白な雪華‥


あぁ、愛しきひとよ
どうかこの想いが冷めないうちに、

はやく逢いにきて…



【雪華】



「まだかな‥」

ポツリと呟くと息が中を舞い白く残って消える
それほどこの状態が寒いことがわかる。

それもその筈
今村田は一人地べたに座りながら冷えた冬空を見つめ森の和泉で『ある人』を待っているのだ。

ある人とはもちろんウェラー卿コンラートの事。
任務に出た彼と待ち合わせをして静かな時を待っているのだ。

お互い会える時間もなくすれ違うばかりでただただ時間だけが過ぎていく日々に人目を忍んで会おうというのこと。つまり逢い引き。

本当に久しぶりに会える。そのせいかいつも以上に執務を早く終わらせた村田は指定場所に早めに着いてしまい、こうして寒空の中を待っている。


「はやく‥こないかな」

胸に期待を寄せて、今向かっているであろう彼を想い顔が綻ぶ村田。




「…………」

小さく包まり今か今かと深々と降り頻る雪を受け身に深くしみとおるのが感じる。

周りは見渡すほど銀世界で真白に染まり、現実ではない‥自分自身をも埋め尽す怖いくらいの白。

頭を振り体に付いた雪を祓いギュと身を抱き締める

今ココにあるのは






『静寂』だけ…


真白な壁で遮るかの様に
思考全てを擽るかの様に


あぁ‥ヤなこと思い出した

静寂は心をも奪う。
甘えも弱さも全て‥
記憶が有りすぎるから仕方のない事なのだが


「早く‥早く来てウェラー卿、でないと僕…」

抱いている体を強く握り
キュッと目を綴じる

瞼を揺らしながらだんだんと意識が霞み白の世界一色に染まろうとする。

すると、微かに後方から雪を踏みしめる鈍い音が近付いてくる




***










「んー…‥」

頬にあたる温かな熱と光りに目が覚め、いつの間にか彼の腕の中に眠っていたことにおどろいた。

「起きられましたか、猊下…」

頭上から降ってくる安堵の声に顔を上げると
安心した声とは裏腹に心なしか表情がおかしい

「ウェラー卿…」

「すみません、俺がもっと早く来ていれば‥貴方をこんなに」


頬に触れる手は微かに震えている

「ウェラー卿のせいじゃないよ。僕が勝手に早く来ちゃったんだし‥そんなに落ち込まないで?」

「ですが…」

「ほら、こんなに震えちゃって‥寒いんだったら君も毛布ちゃんと羽尾ってっ」

自分にはコンラートのコートと毛布がかけられてあり上着だけの彼の姿に呆れながらも毛布を差し出そうとするが

「それでは猊下がお風邪を召され‥」

「いいから言うこと聞く!大丈夫だよ君がそれごと包んでくれたら暖かいし、ウェラー卿が冷たいと僕までうつっちゃうでしょ?」

「‥そう、ですね」

わかりましたと言う彼は何だか不服そうだが村田の言うことだから渋々毛布を受け取った。

「ウェラー卿重くない?」

コンラートの膝の上で胸に身体を預けながらそう問う。
村田が外にいたところから何れくらい時間が立ったかはわからないが彼の事だろう納屋にきた時からずっとこの体勢な筈だ。

「いえ、重くはないですよ。ただそれよりも‥猊下、ちゃんと食事はとってるんですか?」

「え?」

思いもよらない質問


「最後に会ったときよりも随分身体が痩せていると思いますが?」

「え、と‥それは。色々用事があって〜」


「さしずめ書庫に隠りっぱなしだったのでしょう?あれほど言ったじゃないですか、少しは限度を考えて‥」

「ぅ…わかったよっ。ていうか折角人が親切に聞いてやったのに何で最後に僕が怒られなきゃならないんだよ」

「‥心配なんです。猊下はほっとくと何時もつかなくてもいい火種についたり自分自身を削ってまでも本の虫になりますから」

えらい言い草だな…
何処まで子供だと思われてんだろ僕、

村田は自分がそんな風に見られてたのかと半場ショックを隠せなかった。


「先程の事だって、もし俺がまだ来なかったら今頃凍傷してもおかしくないんです。待たせた俺も悪いんですけど‥少しは自分を大切にしてください」


グッと腕の力が強まり
彼の鼓動と村田の鼓動が重なり目の前にはコンラートの苦笑が浮かぶ顔


「ウェラー卿…」

「…………」

「寒いの…??」


揺れる瞳に冷たい指先
微かに震える身体

そっと村田はコンラートの頬に手を添えると自然に重なる村田より大きな手

キュと握り口元に寄せる行為はまるで甘えるかのような仕草


「‥寒いです、とても」









「だから猊下‥貴方が俺を温めてはくれませんか?」


パチパチと聞こえる火鉢にカタカタと窓を鳴らす雪風

ほのかに照らす灯りは
彼をより神秘的に魅せ

身体が熱いのは
赤い光りのせいだと
自分に言い聞かせ



「それは‥僕しかできないこと?」

「猊下でなければ意味がありません」

「ん…‥」


わかったと返事を返すかわりに乾いた口唇へとキスを与えれば

もどかしい程に触れる手
躊躇しがちの指先


緊張してるの?と問えばそうかもしれません。
との返事、なんだか初めてみたいな擽ったい感じに笑みが溢れ恥ずかしながらも久しぶりの感覚に村田は戸惑いながらもコンラートの首に手を回し地へと墜ちていった。











ねぇ、はやく。




この冷めきった心を






貴方の熱で埋め尽して…


*END*
綾綺様へ贈ります
一年以上たった今出来上がりましたコンムラ。如何でした…

ていうか遅くなって申し訳ありませんでしたーッ!!!!冬だし甘アマでもないし駄文だし…メうわぁ

返品可です!
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