マ王
□恋愛の始まり
1ページ/2ページ
猊下が俺を見ていたのは知っていた。
それは最初、まるで品定めをするような感じで。
きっと陛下の臣下としてどうか、猊下なりに探っているのだろう。そう思って気づかないふりをした。特に嫌な視線ではないし、それにヴォルフやギュンター、グウェンのことも同じ視線で見ていたから。
でも最近は違う。
どこか暖かくて、優しい。
そんな視線が俺に向けられるようになった。
他の皆もそうなのかと思って見ていたら違うようで。どうやらその視線は俺だけのようだった。
その視線の感じは知っている。それなりに生きてきた人生の中で何度か経験した視線だから。
だけれど、こればかりは違うのではないかと疑ってしまう。
思い違いなのではないかと思ってしまう。
だって…
(あの猊下が俺に…?)
俺はその答えを知るためか、無意識のうちに猊下を視線で追うようになっていた。
それは恋愛の始まり。
end