Hyumnus

□1.闇に巣食うもの
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跳ね馬のタトゥの入った左手に握る銃の照準を合わせる。
びっしょりと手にかいた汗は、何も持ち慣れない左手での発砲に緊張している為では無い。


「何か言い残す事はあるか」


低い声で、はっきりと発音する。
最期の最期まで情けをかけるなんてどこまで自分は甘い男なんだろうと自潮してしまいたい気分だった。

周りに居る俺の部下達の中には涙を流している奴や、神妙な面持ちをしている者まで、実に多彩だ。そんな中俺はただ、無表情で冷静に銃を構える。
銃をつきつけられているその男が静かに首を横に振ったのを確認して、そっと引金を引く。

バン

その音はこの部屋に、いや、俺の耳に無惨にも大きく響いた。



















闇に巣食うもの























部屋でじっとしていたら腐ってしまいそうだった。何を考えても自己嫌悪、自責の念、後悔が渦巻く暗い感情に支配されてしまって気が狂いそうだった。
足取りが重い。
こんな時俺はいつも部屋でただ時が過ぎるのを待つのだが、今回はじっとしていられなくて屋敷を出る。目的地なんて無くて、ただ行き交う人混みの中に紛れ込んでいた。
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