沢北栄治

□ストロベリー
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12月夕刻。といっても外はすでに夜の闇を帯び始めていた。


私は同じクラスの沢北栄治と帰り道を歩いていた。沢北とは家が近所のためよく一緒に帰る。

栄治の馬鹿話を聞いてた私はマフラーに埋もれてる唇の乾燥が気になりコートのポケットからリップクリームを取り出して唇に塗っていた。そしたら突然栄治が私の方に顔をガバッと勢いよく向けるからすごいびっくりした。


「イチゴのにおいがする!!!お前イチゴ食っただろう!?」
「へ?」
「マフラーで口元が見えないと思ったら大間違いだぞ!!」
何をいきなり・・・




「ずるい!俺にも頂戴」
何を言ってるんだか。。。お弁当の時間ならともかくこんな道ばたでイチゴなんて食べないよ。
イチゴ・・・?


あっもしかして・・・


「このリップの匂いじゃない?」

そう言って栄治の鼻にリップを近づけたら「ああこれか」とすぐ納得してくれた。イチゴはあきらめてくれたみたい。


「それにしても女子ってよくリップ塗ってるよな」
「だって切れたら痛いしガサガサとかイヤじゃない」
なんて本当は好きな人に“キスしたくなる”って思ってもらえるようにって言う気持ちが本心なんだけど。好きな人には言うまい。


「先輩たちも最近塗っててさぁー河田さんになんでごついのに身だしなみに気を遣うんですかって言ったらまた技かけられたし・・」
「ばか・・・」
栄治はいつもそう。なぜか一言多いんだから。ごつい人にごついって言ったら怒られるに決まってるのに。
「あー!またばかっていたっ」
急に口元を押さえるからどうしたのかと栄治の顔をのぞき込んだら涙目になってて笑いそうになる。
「唇切れた・・ピリッて。」
「もう!あんたもリップ持ちなって!今はこれ貸したげるから」
私のリップを差し出したら「サンキュ」って言うからてっきり使うのかと思ったのに。それに間接キスだってちょっとドキドキしたのに。
リップをもつ私の右手首を掴んだからちょっとふらついてしまった。
そしたら今度は後頭部を押さえられて心臓が飛び跳ね、気づいたら私の目の前には栄治の顔。唇には柔らかい感触・・・がグッと押しつけられるから私の体は固まってしまった。まばたきも忘れるほど。







「俺リップはいいや。必要になったらお前んとこ行くから!」




普段ばかなのに・・たまにすっごいかっこよくてたまにすっごいかわいい笑顔なんてずるいよばか。
                      

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