桜並木口

□子猫
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「ニャーォ…」

「へっ?」

出稽古の帰り道、突然の夕立に雨宿りした軒先。
足元にはいつの間にか両手に収まってしまうくらいのずぶ濡れの子猫。

温かさを求めてか足に何度も摺よってる。

頭を摺よせては鳴きながら私を見上げる。

居場所を求める目。
まるで…。

いつも言葉にしたいのに言わないから似てる。

「さみしいの?」

(さみしいょ…だから抱きしめて)
って訴えるような表情。

言葉に出来ないあなたに似てる。

抱きあげると満足そうに。
「ニャーォ。」

私にぴったりくっついて目を閉じる。

「よしよし。もう大丈夫だからね。」

見つめてるとなんだかいつも見てる様な気になる。

(なんでだろう?)

頭を撫でると気持ち良さそうにゴロゴロ喉を鳴らし始めた。

その表情に愛しささえ憶え始める。

(やっぱり、似てる。)

「あんた、かわいいね。愛しくなっちゃった。帰る所が無いなら一緒に帰る?」
「ニャーォ。」

うんとでも答えるように私を見る。

ほら、また。

見慣れた顔に似てる。

こんな事、当の本人には言えないけど。

「よしよし。愛してあげるからね、さぁ帰ろうか?」

雨がいつの間にか上がっていた。

だから、軒下からでると・・・。
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